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「育てられない母親たち」など注目の新書5選(朝日新聞2020年4月4日掲載)

『育てられない母親たち』

 児童相談所への児童虐待の相談は2018年度は約16万件にのぼる。「DVの連鎖」「レイプで生まれた子」「感覚過敏」など、育児困難に陥ったり、虐待をしたりする母親と被害を受けた子どもについて事例を列挙。夫との関係や、心理、背景、社会的要因、受け皿を検証した。
★石井光太著 祥伝社新書・1056円

『AI vs.民主主義』

 トランプ大統領を誕生させた2016年の米国大統領選や18年の中間選挙など、米国のデジタル選挙戦略の実態を丹念に取材。AIを駆使した世論操作が、どこまで受け手の意見を操り、民主主義にどのような影響を与えるのかを検証する。日本にも迫る危機に警鐘を鳴らしている。
★NHK取材班著 NHK出版新書・935円

『体育会系』

 副題は「日本を蝕(むしば)む病」。「やればできる」の根性論と同調圧力。日本の学校や社会を覆う「体育会系思考」を、ドイツ人の父と日本人の母を持つドイツ育ちの著者が斬る。ブラック校則、組み体操、皆勤賞や自然分娩(ぶんべん)礼賛など、欧米と比較して日本の常識の不思議に迫る。
★サンドラ・ヘフェリン著 光文社新書・990円

『ひとの住処(すみか)』

 1964年、10歳だった著者は丹下健三設計の国立代々木競技場に憧れ建築家を志す。半世紀後、2度目の東京オリンピックで新国立競技場の設計を担った建築家の自叙伝。工業化社会、金融資本主義の先の建築とは何か。時代とともに移りかわる人の住まいや都市についても考察する。
★隈研吾著 新潮新書・814円

『日本人のための漢字入門』

 令和の「令」の下は「卩」と「マ」のどちらが正しいかといった解説をはじめ、スマホやパソコンで「進退」「邁進」「邂逅」と入力すると、シンニョウの点が一つと二つでばらつくが、情報化時代になぜかなど、漢字にまつわる意外な発見や面白さを紹介する。
★阿辻哲次著 講談社現代新書・968円=朝日新聞2020年4月4日掲載