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「医者が教えるサウナの教科書」書評 脳疲労を取り深いリラックスへ

評者: 坂井豊貴 / 朝⽇新聞掲載:2020年05月23日
医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか? 著者:加藤 容崇 出版社:ダイヤモンド社 ジャンル:人生訓・人間関係・恋愛

ISBN: 9784478110317
発売⽇: 2020/03/06
サイズ: 19cm/223p

医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか? [著]加藤容崇

 サウナが好きだ。みんな行けばいいのに。サウナに行かない人にそう言うと、怪訝(けげん)な顔をされることが多い。なぜわざわざ暑い部屋に入るのか。水風呂は冷たいだけではないのか。身体に悪そうだ等々である。行けば分かる話なのだが、それでは説明になっていない。それに自分でもサウナの何が、どうしてよいのか、分かっているわけではない。あの安らぎや多幸感は、なぜ得られるのだろう。
 著者はサウナを愛する医学者だ。サウナ好きが高じて、その効能を研究したり日本サウナ学会を作ったりしている。サウナの一番の効能は「脳疲労が取れること」だという。人間は自分では考えるつもりがなくとも、脳が勝手に動いて思考を進めるといったことがある。そのエネルギー消費は激しく、脳は疲労する。とくに多忙なビジネスパーソンほど、脳をオフ状態にするのが難しい。それはときに精神疾患にもつながるものだ。しかしサウナは脳波を整え、心身を深いリラックスへと導いてくれる。よい睡眠も得やすくなる。入浴だけでは得られない効能がある。なるほどやはりサウナとは特別なものなのだ。
 とはいえサウナの愉しみ方には注意が必要だ。たとえばサウナ室や水風呂への長すぎる滞在や過度の繰り返しは、避けるべきとのこと。刺激を求めすぎると、サウナ依存症のようになってしまうからだ。これについては自分も思い当たるフシがあるから、気を付けねばならない。
 日本ではサウナがブームの枠を超え、文化として定着しつつある。ところがそのさなか新型コロナウイルスが襲来し、現在は多くのサウナ施設が休業してしまった。だから再開まではサウナ愛好者も、未体験だがサウナに関心をもつ人も、この本を読みながら待っていてはどうだろうか。暑いサウナ室で、次に行く水風呂の心地よさを想像しながら、じっと座って熱波を愉しむようにである。
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 かとう・やすたか 1983年生まれ。慶応大医学部腫瘍センター特任助教、日本サウナ学会代表理事。