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「首都改造」書評 東京の光景はどう作られたのか

評者: 戸邉秀明 / 朝⽇新聞掲載:2020年07月04日
首都改造 東京の再開発と都市政治 (歴史文化ライブラリー) 著者:源川真希 出版社:吉川弘文館 ジャンル:社会・文化

ISBN: 9784642059008
発売⽇: 2020/04/20
サイズ: 19cm/216p

首都改造 東京の再開発と都市政治 [著]源川真希

 高層ビルが林立する東京の一等地。今は見慣れたその光景はどうやって作られたのか。本書は前回の五輪から半世紀余の首都の再開発を、政府・自治体・開発業者の関係を軸に描き出す。
 公文書を掘り起こしてたどる都市の政治史は、投資を呼び込む地価上昇が政策の最優先課題となる歴史だ。バブル崩壊後の地価を反転させようと、石原慎太郎都政と小泉純一郎内閣の規制緩和が連動した2000年代前半、流れは加速する。不動産の証券化や、その後の国家戦略特区の設定により、都心再開発は製造業の「代替産業」の域を越え、政府が「緊急」を叫ぶ政策の中枢に据えられた。
 来年の五輪がどうなろうと、その時、都知事が誰だろうと、この勢いは「資本の行き着く先がほかにみいだせないかぎり、止めることができない」。だがコロナ禍は、従来の前提を次々と覆しつつある。本書が一望する同時代を鑑(かがみ)として、一極集中とは別の未来を探せるか。ここが正念場だ。