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「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」で知る薬剤師 医師と対立することもしばしば!?

文:佐藤直子

 病院であっという間に診察が終わってしまって、処方される薬についてもう少し聞きたいのに何となく聞けなかった、という経験ありませんか。馴染みのない薬の名前、使用方法を聞いても覚えられない…。そんな時に活躍するのが薬剤師です。今回は薬剤師が主役の『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(荒井ママレ、医療原案・富野浩充、コアミックス)を取り上げます。

 主人公の葵みどりは、病院に勤務する2年目の薬剤師。正義感に満ち溢れ、新薬が出るたびに自ら試すバイタリティーのある性格の持ち主です。医者からは疎まれ、患者からは薬を出す窓口ぐらいにしか思われていない、しかも実際に病に働きかけているのは薬ではないか、という現実にやりきれなさを感じる毎日。そんなみどりの成長と活躍、薬剤師の存在意義や舞台裏を紹介している作品です。

©荒井ママレ/コアミックス

 薬剤師の仕事は、医師の処方に基づいた調剤のほか、千種以上の医薬品の管理の徹底、患者への薬の飲み方の提案や指導などその仕事は多岐にわたります。そして、実は医師と対立することもしばしば。なぜなら、唯一薬剤師のみが、医師が処方した薬に対し、疑わしい点や患者の体質に合わない薬や飲み合わせをチェックできるからです。薬の副作用を防ぐ重要な役割を担うこの権限を「疑義照会」といいます。

 『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』では全国で1日に処理される処方箋はおよそ220万枚、その中で6万枚を超える処方箋が「疑義照会」を行っており、約70%が処方変更になっていると描かれています。みどりは薬を安全に患者へ提供するため積極的に疑義照会を行います。疑義のほとんどはデータの入力間違い、作業のルーティン化など単純なミスから発生しているそうですが、疑義をかけると、自分の判断にケチをつけられたと不満に思う医師もいて、ヤキモキさせられる薬剤師が多いといいます。

©荒井ママレ/コアミックス

 みどりの病院では1200人の患者を10人の薬剤師が担当しています。上司からは、正確にスピーディーにと指示され、処方箋を捌いて、捌いて、とにかく捌く。調剤では日々時間との闘いを求められています。患者との会話から病気の進捗や体調の変化など気づくこともあるのに、と困惑するみどり。そんな彼女を陰からサポートするのが先輩の瀬野です。彼は医師のミスを阻止し、患者の命を救った経験から、医師や看護師からも厚い信頼を得ている薬剤師です。救命救急を行うチームに薬剤師が関わることになったことも、積極的に他部署と関わってきた瀬野の活躍によるもの。瀬野に憧れるみどりは、瀬野の様に現場に必要な薬剤師になりたいと目標にしています。しかし瀬野は、どんな薬剤師でありたいかをみどりに問うのです。

 命を直接救うことはできないけど、患者に近い立場で医療を確実に行うことはできる。その思いからみどりは、患者と医者との間で置いてきぼりになっている患者の家族や、薬の情報が多すぎて迷子になっている人に手を差し伸べます。

 私たちが安心した生活を送るため、薬の手引きをしてくれるプロフェッショナル。あなたの当たり前の毎日を守る小さな小さな砦。それが薬剤師です。

 「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」で知る、薬剤師あるある!?

  • 「もうよくなったから、この量を飲まなくてもいいよね」「2錠だと効きすぎる気がするから1錠にしたよ」「副作用があると聞いて量を減らそう」など、自分で勝手に判断してしまう患者さんに注意する 
  • 病院の薬剤師には夜勤があり、忙しい時にはカップ麺で食事を済ますこともある
  • 救命救急の場では、薬剤師も心臓マッサージを行うことがある
  • 調剤室、病棟など病院内にあるすべての薬剤の在庫を把握するため、1日がかりで行う棚卸しが年に4回ある。錠剤は1錠単位で数える
  • 薬剤師は、コミュニケーション能力、患者のみならず医師のクセや機嫌のいい時間を把握している鋭い観察眼をもつ看護師に一目置いている