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映画「事故物件 恐い間取り」亀梨和也さん&松原タニシさんインタビュー  恐怖に笑い、まさかのラブも!

文:根津香菜子、写真:斉藤順子

仕事終わりに怪談番組を見る日々

――亀梨さんはこれまでに「野ブタ。をプロデュース」や「ジョーカー・ゲーム」など、数々の原作実写化に出演されていらっしゃいますが、今回の原作はどのような解釈をして撮影に臨まれたのですか。

亀梨和也(以下、亀梨):原作はオファーをいただいてから読ませていただきました。タニシさんの実体験を読み進めていく読者側としては、書かれている内容からイマジネーションを膨らませて、想像するという怖さがありましたね。この作品を映画にするにあたって、原作の良さをどう画としてやっていくのかという点は、本で読むのと映像化することの大きな違いだと思うんです。なので、脚本や作品のディテールみたいな部分は、撮影に入る前から役作りを含めて僕から意見を提示させていただくことはありましたけど、大きい枠組みに関しては、映画の脚本や中田(秀夫)監督、プロデューサーさんの意向というものをしっかり汲み取りながらやっていきたいなと思いました。

© 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

――山野ヤマメという役、ひいては松原タニシさんという人物はどのようにつかんでいったのでしょう。

亀梨:ヤマメというキャラクターに関しては、タニシさんという実在される方の実話でもあるので、どれくらい自分の感覚の中でタニシさんの要素をヤマメに吹き込んでいくかということは、慎重にジャッジしました。もしこれがタニシさんの名前のままの役柄だったら、よりビジュアルも含めて寄せるという選択もあって、また違ったアプローチになったのかもしれませんが、今回はヤマメという要素があって、その中でタニシさんの要素の割合も入れていくといった感じです。タニシさんとはたくさんお話をさせてもらいましたし、出演されている番組も見て、自分なりに観察しました。怪談系の番組を家で見るのが怖かったので、仕事終わりの移動中にスマホとかで見ていたんですが、「今日も一日頑張った!」の後に「うわ~っ」ってなることは、自分の生活に中々なかったですね(笑)。

松原タニシ(以下、松原):はっはっは(笑)。そうですよね。

亀梨:撮影が始まる前にプロデューサーさんから参考までにとホラー映画を何本かいただいたんですが、それを見るのにもちょっと時間がかかりましたね。最初の5分くらい見て「ちょっと今日じゃないな」とか「明日も仕事があるし……」って思って止めちゃって(笑)。心に余裕がある時に見るというか。例えば、何か悩み事がある時にコメディ映画だったら思いっきり笑いたいとか、ヒューマンドラマで泣きたいみたいなのがあるけど、疲れている時に中々ホラーには手が伸びないですよね。

「何で亀梨さんが? どっきりかな?」

――タニシさんは今回の映画実写化と、ご自身の役柄を亀梨さんが演じられると聞いた時いかがでしたか。

松原:「うそかな? どっきりかな?」って思いましたし、「何で亀梨さんが出られるんだ?」という疑問しかなかったです。その気持ちの整理がつかないままクランクインしたんですけど、実際に亀梨さんにお会いした時に納得できる部分があったんです。亀梨さんはチャレンジ精神が旺盛というか、何でもちゃんと向き合いますよね。

亀梨:でもいまだに、お好み焼きとご飯を一緒に食べたことはないですよ。まだその扉は開けられないんです(笑)。

松原:やっぱりNGなこともあるんですね(笑)。それでよくこの「事故物件」の扉を開けてくれましたね。売れない芸人役で、しかもホラー作品の出演は初めてだそうで。

亀梨:そうですね。自分としてもチャレンジした作品でした。映画自体もチャレンジなことばっかりだし、ポスターも斬新! 「殺人・自殺・火災による死亡事故等が~」っていう言葉の中に自分が映っている(笑)。

© 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

松原:発想がすごいですよね。亀梨さんもそうですけど、この映画は他と比べるものがない作品かなと思います。面白さもあるし、切なさやラブもあっての「怖さ」があるので。

亀梨:ホラー要素だけじゃなく笑いやラブもあるから、まさにエンタメ作品だと思います。だけど、その「怖さ」の測り方が難しいんですよね。僕はお芝居して現場にいるから、ホラー部分の要素って全部分かっているわけじゃないですか。だから、初見での「怖い」のリアクションを持っていないんですよ。撮影はカット割りもあるので「次はこういうアングルでくるな」とかも分かるし、そういう仕掛けがあることも知っているんです。それでもゾクっとするところはありましたけど、映画を見たみなさんがどれくらい「怖い」と思われたのかはすごく気になりますね。

――タニシさんは本を含め、色々な所で心霊体験をお話しされていますが、亀梨さんは何か体験されたことはありますか?

亀梨:あります。夢だったのかも曖昧なんですけど、ホテルで寝ていたら、横の方に人が立っている気配がしたんですよ。そっとそっちを見たらその人と目が合って、そこから視界が真っ赤になって体が動かないっていうことがありました。あとはツアー中、後輩のジャニーズJr.の子たちが夜すごく騒いでいて「うるさいな~」と思っていたんですが「あれ? Jr.の子たちとはホテル別だよな」って気づいた瞬間、「ワッ!」ってなったりとか。

松原:怖いな、それ(笑)。

亀梨:ホテルは割とそういうことが多いですね。なので、部屋に入ったらまず手を叩いて音が響くか響かないか確認しています。あと、あるホテルでシャワー中に何か嫌な予感がしたので、換気しようと思って窓を開けたらその前が墓場だったとか。僕は元々、シャワー後にお清めの塩と、ある神社の水を必ず浴びるようにしています。

© 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

亀梨さんは素敵なオカルトヒーロー

――亀梨さんの心霊エピソード、結構重ためなものが多いですね。

亀梨:僕、結構ヤバいですかね? 実は今日もここに来る時、車のフロントガラスにヒビが入っていたんです。そんなの人生初ですよ。飛び石か何かなんだろうけど。あと、タニシさんと会う日はスライドドアが自動じゃなくなっちゃうんです。

松原:もう素敵なオカルトヒーローですよ。僕自身は、自分をオカルトな人間と思っていないんです。「なるべくしてなってしまった」状況なので、亀梨さんには今後も無事でいてほしいと思います。彼ら(霊的なもの)は、敵と思ったら向こうも襲ってくる気がするので、僕は彼らを敵じゃないと思うようにして今まで何とか乗り越えてきたので、亀梨さんにもちょっとしたイタズラはあるかもしれないけど、「はい、はい」くらいにじゃれている程度だったらいいのかなと。

亀梨:僕もやっかいな感じのものを受けた時は、塩や水を多めにまきます。例えば、お腹が空いている人にご飯を提供しているような気持ちと同じで、シュシュっと気持ちよくシャワーを浴びせるような感じで水を与えることで、霊も「落ち着いたわ~」みたいな(笑)。

松原:その感覚、いいですね。

――そんな恐怖体験を経験してきて、今回、初めてのホラー作出演の扉を開けることに不安はなかったのですか?

亀梨: だからこそ余計に今回のお話を頂いた時、やっていいものなのかどうか悩みました。ホラー作だから嫌だというわけではなく、そこに踏み入れるまでの時間が自分の中の葛藤で、最後の押し問答でした。「霊」という存在や心霊現象を自分が仕事として扱うこと、果たしてそこに向き合っていいのかということを一番悩みましたね。なので、この映画の公開がいい形で皆さんに楽しんでいただけるエンターテインメント作品になってくれたらいいなと思います。

松原タニシさんにさらに詳しく聞きました

――映画で事故物件の雰囲気をどれだけ再現できているのかジャッジできるのはタニシさんだけかと思うのですが、想像していたものと出来上がったものをご覧になっていかがでしたか。

 どんな風に映画になるのかが全く想像できなかったので、ある意味楽しみでした。出来上がった作品は予想もつかないエンターテインメント作品になっていて、今までのホラー映画とは全く違うと言いますか、見たことのない映画に仕上がっているので驚きしかないですね。

 事故物件の雰囲気もしっかり再現されています。特に、部屋に入った時の緊張感ですね。その緊張感って、段々慣れてくるものなんですけど、引っ越した初日に感じる不安とかを、セットや照明の雰囲気で合わせていますし、亀梨さんの表情や動作、仕草にすごく緊張感があって、よく表現されているなと思いました。僕自身が事故物件に住んでああいうリアクションをしていたかは分からないので、映画になって客観的に見たときに「あぁ、こういうことだったのかな」と再確認できた気がします。

――洋の東西を問わず、ホラー映画やオカルト番組は昔から人気がありますが、本作においての「怖いもの見たさ」という人の心理は、どんなものだと思われますか?

 事故物件に住まなければいけないという状況が、この映画を見る方にはないはずなんですよね。だけど、僕はお笑い芸人として世に出るために事故物件に住まざるを得ないというか、それがチャンスになるという特殊な状況な訳で、これが「怖いもの見たさ」プラス「奇特な人の人生をのぞき見している」という心理がはたらくんじゃないでしょうか。見たことや感じたことのないものが同時に味わえることで、怖いもの見たさと珍しいもの見たさが満たされるんじゃないかと思います。

――実は私、ホラーものが苦手だったのですが、今回初めて最後まで見終えることができました。息が止まりそうな恐怖シーンもありましたが、「どうしてもこのチャンスをつかまなければ!」というヤマメの思いや、色々な事情で夢を諦めざるを得ない葛藤を抱えた元相方の中井くん、仕事が思うようにいかない梓ちゃんの悔しさ、そういった人間ドラマもしっかりと描かれていたのが印象的でした。

 本作の脚本を担当してくださったブラジリィー・アン・山田さんは劇団も主宰されている方なので、これまで役者が頑張っている姿や、夢半ばで諦めざるを得ない同士たちの姿もたくさん見てきていると思います。そこと「恐い間取り」の原作で照らし合わせられる部分を、映画ではうまいこと合わせてくれたと思っています。

――ちょっと私の怪談実話小話をしてもいいですか? 私、中学生の時入院していたんですが、ある晩、見たことのない金髪で真っ赤な口紅をした看護師さんが部屋に来て、急に私の足首を掴んだんですけど、その手がものすごく冷たかったんです。その後、ベッドサイドのランプを私にあててじっくり顔を見た後、無言で手首の脈をとる、っていう。

 怖っ! めっちゃ怖いじゃないですか。聞いたことないですよ、金髪で真っ赤な口紅の看護師って。

――翌朝、別の看護師さんに「昨日の夜、金髪の看護師さんが脈取りに来たけど、新しい方入ったんですか?」って聞いたら「そんな人いないよ」と言われて。今でもあの手の冷たさは忘れられないです。

 でも、それがリアルやと思います。よくあるホラー映画やドラマでは表現できないというか。実際、ホンマにあることって、金髪の看護師とか触った手が冷たいとか、「事故物件」だったら交通事故に遭うとか。そういうリアルで説明ができない不条理なことを体験した人にこそ、映画を見て共感してもらえる部分があるんじゃないかなと思います。

――怪談実話系で最近気になっている本はありますか?

 宣伝するようで申し訳ないんですが、僕が帯文を書かせていただいた深津さくらさんの『怪談びたり』は、あまり聞いたことのないような怪談話が多くて新鮮です。深津さんは主婦の方なんですけど、怪談が好きすぎて卒論のテーマにしたそうですし、怪談の大会みたいなのに出て、そこでの話が怖すぎて評価されて本を出すに至ったんですけど、そういう人生もあるんだなと思いました。恐怖が染み込んでくるような感じがするんです。