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まつざきしおりさん「みーたん!」インタビュー 直島に暮らす幼稚園児と家族の成長日記

成長記録として残したかった

――Instagramでの投稿がフォロワー数10万人を超える人気となり、単行本化された『みーたん!』ですが、描き始めたのは、みーたんがいくつの時からですか?

 最初は絵日記で、娘がお腹の中にいる時から描いていました。自分が小学生の時、母親がずっと書いていた育児ノートを読んで、すごく嬉しかったので、私も書いて残しておいたら、子どもが大きくなった時にうれしいかなと思ったのがはじまりでした。

 インスタでは、自分の日常の瑣末なことを描いていましたが、自分の日常より、横にいる娘の言動の方が面白くて、それを書き留めておきたい欲が出てきて、インスタで『みーたん!』を描き始めました。

『みーたん!』(文友舎)より

――赤ちゃんの頃は育児だけでも手一杯なのに、マンガを描くのは大変ではなかったですか?

 逆にストレス発散というか、大変なことをマンガで面白おかしく描くことで消化するみたいな気持ちもありました。過去に諦めたマンガ家になりたいという夢にもう一度挑戦しようと思うきっかけになりましたし、結果的に自分の夢に繋がったので、娘には感謝しています。漫画を描き始めた頃はまだ1歳だった娘も、今年小学生になって世界が広がり、赤ちゃんや小さい頃とはまた違ったおもしろい言動がたくさんあるので、成長記録として、この先も描いていきたいですね。

父娘の「ショートコント」も

――作品には、育児の大変な部分はあまり描かれていないですよね。

 生まれた時は想像を絶する大変さで、自分は子育てをするのは向いてないんじゃないかと思うこともありました。でも、あえてそこは描いていません。大変さを絵にしたくないというか、私自身、暗い話を読むとすごく落ち込んでしまったり、本の内容に影響されるところがあるので、あまり辛い話や暗い話は描きたくないなと。親バカぶりも含めて、愛されて育ったんだということがわかるように描いています。親バカは親しかなれないですしね。

『みーたん!』(文友舎)より

 たかぎなおこさんのコミックエッセイが大好きで、影響を受けました。たかぎさんの作品にはハプニングも面白おかしく描かれているので、読んでいて癒されます。みーたんは、マンガのキャラクターとして面白おかしく描きたいという想いと、娘の成長記録として喋っている言葉を一言一句間違わずに書き留めたいという想いもあって、そのバランスが難しいですね。

――みーたんがお父さんに対してちょっぴり塩対応なところも面白いですね。私にも同じ年頃の娘がいますが、やっぱりお父さんに冷たいです(笑)。

 ああ〜、お父さんって大変ですよね(笑)。うちは、塩対応される父さんも、している娘も、そのやりとりを楽しんでいる感じもあって、私はショートコントを見ている感じで、楽しませてもらっていました。

 最初は覚えたての言葉を使って父さんにトンデモ発言していた娘も、小学生になり気遣いの言葉をかけてあげられるようになったりして、成長したなぁと思います。あの面白い塩対応コントが見れなくなってきたのは、ちょっぴり残念ですが・・・・・・(笑)。

『みーたん!』(文友舎)より

思い切って、大阪から直島へ

――香川県の直島はアートの島としても知られていますね。私も数年前、瀬戸内国際芸術祭の時に訪ねて、アートが島に溶け込んでいる感じがとてもすてきだなと思いました。まつざきさんは漫画家としてだけでなく、直島の観光大使としても活動しているそうですね。

 25歳で直島に移住して、島の方に温かく迎え入れてもらい本当にお世話になったので、大好きな島のためになにかしたいと思って観光大使に応募しました。観光イベントや移住の講演会に参加したり、お土産物のデザインなどもしています。移住者仲間と、直島の魅力を伝える「あるある直島」というアニメーション制作などもしています。

 島に来るまでは、大阪の企業でお菓子の企画開発をしていました。やりがいのある仕事でしたが、大きな企業だったので、自分が企画した商品も、いろんな人が関わって、遠く離れていってしまう感じがあって、もっとお客さんの近くで働きたいなと。自分で作ったものやサービスを目の前で受け取ってもらって、喜んでもらえるような環境と考えた時、思い浮かんだのは大学時代に行った直島でした。島に流れる穏やかな雰囲気が忘れられなくて、思い切って移住しました。

――憧れの島での生活はいかがですか?

 直島に流れる優しい雰囲気や、人の温かさに包まれ、とても居心地がいいです。もともと忙しくするのが好きで、都会にいると周りも忙しすぎて自分がバタバタしてしまうので、島のゆったりとした感じの方がバランスがとれているような気がします。まだまだやりたいこともたくさんあります。『みーたん!』は子どもたちも喜んでくれるのがすごく嬉しいので、子ども向けにイベントをしたり、子どもが読めるようなマンガや絵本、アニメーションも作ってみたいなと思っています。

 子育ては本当に大変で、みなさん苦労していると思います。そんな時に『みーたん!』を読んで、ふっと笑って、息抜きになれたらいいなと思って描いています。チョコレートひとつ食べてホッとするとか、コーヒーを一口飲んでホッとするとか、そんな感じで気楽に楽しんでもらえたら嬉しいですね。最近、わが家に子猫がやってきて、またより一段と賑やかになりました。みーたんや、うさぎの「こむぎ」とのやりとりも楽しいので、またこれから色々とたくさん楽しいエピソードを描いていきたいです!