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定番ボードゲームのクトゥルー版を遊んでみた①「ラブクラフト・レター」 好書好日ボドゲ部

 たった16枚のカードで、スリリングな駆け引きを楽しめる「ラブレター」。日本を代表するゲームデザイナー・カナイセイジさんによる切れ味抜群のカードゲームで、2012年の発売以来、国内外で多くの賞を受けた名作です。そのクトゥルー版として登場したのが、「ラブクラフト・レター」。9枚の「狂気カード」が加わることで、より戦略性が問われるゲームになっています。

 今回参加したのは好書好日に加え、きょうだいサイトの「telling,」「GLOBE+」「かがみよかがみ」の編集部有志です。

ルール説明(インスト)

 まずはオリジナルと同じ16枚のカードでインスト。カードには1~8の数字がふられていて、それぞれ能力を持っています。プレイヤーは1枚のカードを手にしてスタート。山札から1枚を引き、2枚のうちどちらかのカードを場に出します。出したカードの能力を発動して、他のプレイヤーのカードを捨てさせます。山札が無くなったときにカードを持っていて、なおかつカードに書かれた数が大きい人が勝ち。1ゲームは10分以内に終わるため、3ポイント先取といった複数回で勝者を決めるのが一般的です。オリジナルとの違いはカード名。1の「兵士」(他のプレイヤーの数字を当てて捨てさせる。ただし1は指定できない)は「探索者」に、8の「姫」(このカードを捨てさせられたら即敗北)は「ネクロノミコン」などと、いかにもな名前になっています。

オリジナルルールで練習

 4人でプレイ。1枚引いて1枚場に出すだけなので、みな手元にくるカードの数字と能力を一覧表を見ながら確認するのに集中しています。カード名はそっちのけ。1巡目はかなり手探りですが、場に出たカードが増えるにつれ、出てないカードが何かを推測するカウンティングに頭を悩ませ、手がとまります。1~8のカードは2枚ずつではなく、数字が小さいものほど枚数が多いのです。大きい数字を残したいのですが、強制的に交換を強いるカードもあり、思惑通りにいかず、うめき声やぼやき、三味線もどきの発言も。

いざ、クトゥルーの世界へ

 何ゲームか遊ぶうち、みな勘所をつかんできます。次の手番まで他のプレイヤーから干渉されない4のカード「旧き印」(オリジナルは「僧侶」)を「バリアじゃん」「これ強いのでは」と認識したあたりで、0~8が1枚ずつ計9枚の「狂気カード」を追加して、いよいよ本番です。こちらは「深きもの」(1)、「ティンダロスの猟犬」(3)、「ニャルラトテップ」(6)など、ファンなら狂喜しそうなカード名ばかり。通常能力に加え、「すべてのプレイヤーの手札を集め、好きなように再配布する」といった勝利に直結しそうな「狂気能力」を持っています。「狂気カード」を出したプレイヤーは「狂気状態」となり、次の手番から「狂気カード」を出す際に「通常」「狂気」二つの能力のどちらかを選んで発動できます。選択肢が増えてラッキー、と思いますがデメリットも。「狂気状態」になったプレイヤーは手番の開始時に、「正気度チェック」(いわゆる「SAN値」ですね)を行わなければなりません。自分の場に出されている「狂気カード」の枚数だけ追加で山札を引き、そこで「狂気カード」が出た瞬間、ゲームから脱落してしまうのです。突然の未知なる恐怖に出くわし、正気を失い、生死にかかわる事態になるわけですね。なるほど、クトゥルー。

「狂気」な本番ゲーム

 カード枚数も増えたので、ここから5人でプレイ。3ポイント先取で勝者を決めます(狂気状態の勝利と8を持って勝った場合は2ポイント)。いきなり編集部Tが一巡バリアの4のカードを3枚すべて引ききって出す「防御プレイ」で場を沸かせますが、それでも脱落してしまうというユニークな展開に。2ゲーム目まで、「狂気状態」になる人はいても、「狂気能力」を発動できず、かといって「正気を失って」脱落という展開も起きません。おとなしめな展開に、「早く狂気になりたい」と不穏当な発言も飛び出す始末。そんな「狂気」狙いを宣言した「かがみよかがみ」のI君が、4ゲーム目に「正気度チェック」をかいくぐり、「狂気状態」で生き残って2ポイント獲得、計4ポイントとなり勝利を収めました。みな沈思黙考する局面が目立ち、プレイは1時間近くに。「簡単だけど、思ったよりも頭を使う」。そんな感想が出ていました。

 続いては「パンデミック クトゥルフの呼び声」を遊びます。

>定番ボードゲームのクトゥルー版を遊んでみた②「パンデミック クトゥルフの呼び声」はこちら

【クトゥルー神話の豊潤なる世界】

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