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「1は赤い。そして世界は緑と青でできている。」書評 文字に色がついて見える人生

評者: 須藤靖 / 朝⽇新聞掲載:2020年10月24日
1は赤い。そして世界は緑と青でできている。 「文字に色が見える」共感覚の話 著者:望月 菜南子 出版社:飛鳥新社 ジャンル:哲学・思想・宗教・心理

ISBN: 9784864107723
発売⽇: 2020/08/07
サイズ: 19cm/206p

九九と百マス計算は、色で覚えて大得意。あいうえお順で並んだ席順は、廊下側がカラフルで窓側が静か。鎌倉幕府の将軍の名前はみんなピンク色だから大混乱…。共感覚をもつ女子大生が…

1は赤い。そして世界は緑と青でできている。 「文字に色が見える」共感覚の話 [著]望月菜南子

 文字や数字に色がついて見える人がいる。20年ほど前に初めてそれを知ったときには本当に驚いた。
 これはある刺激に対して異なる種類の感覚が生じる共感覚の一種で、色字(しきじ)共感覚と呼ばれている。
 例えば黒の文字列で書かれたこの書評の文章も、共感覚者には文字ごとに異なる色がついて見えるのだ。
 常に色に囲まれた日常を過ごす方々にとって、この世界は果たしてどのように映るのだろう。
 記憶によれば3歳の頃にはすでに文字に色がついて見えていた著者は、17歳の時に高校の先生と話しているうち、みんなは文字に色がついて見えていないことを認識し、衝撃を受ける。
 ちょっぴりユーモアを交えながら、共感覚者が見る世界を伝えてくれるのが本書。九九を覚えるには役立ったが、源氏の将軍の名前はみんなピンク色に見えて苦労させられたなどのエピソードの数々には、なるほどとうなずくばかり。人間の認知機能は奥深い。