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「新明解国語辞典」9年ぶり改訂 「恋愛」「男」「賢夫人」…時代に応じて語釈を手入れ

『新明解国語辞典』第8版=三省堂提供

 辞書には、個性がある。なかでも『新明解国語辞典』(三省堂)は言い換えに逃げず、細かいニュアンスまで伝えようと、独特の語釈や豊富な用例でこれでもかと迫ってくる。

 9年ぶりに改訂された第8版が19日に発売される。〈出来るなら合体したいという気持を持ちながら〉(第3版)と書かれてかつて話題になった【恋愛】は今回、対象が「特定の異性」から「特定の相手」に変わった。

 【男】の語釈では、〈狭義では、弱い者をかばう一方で、積極的な行動性を持った男性を指す〉とあった箇所に、その特質は〈伝統的・文化的価値観から評価される〉ものだという説明が書き加えられた。

 「言葉は伝統や文化と切り離せないけれど、それゆえに生まれる偏見も背負っている。悩み抜いた結果です」と三省堂辞書出版部の山本康一部長は話す。〈卑劣きわまる〉と表された【ヘイトスピーチ】、【コロナウイルス】と、辞書の改訂では新語が注目されがちな一方、すでにある言葉の見直しは、地道だが大切なメンテナンスだ。

 「国語辞典の命は語釈なんです」と長く編集を担当してきた吉村三惠子さんはいう。【賢夫人(けんぷじん)】など、男性目線の古い言葉も、〈内助の功を認められた夫人を言った〉と過去形に変え、背景が伝わるようにして残した。「ちまちましているけれど、辞書が社会の変化を映しているというのは、こういうことなんだと思います」(興野優平)=朝日新聞2020年11月18日掲載