1. HOME
  2. コラム
  3. 文庫この新刊!
  4. 十代少女の視点で語られる詩 「適切な世界の適切ならざる私」など山田航さんが薦める新刊文庫3冊

十代少女の視点で語られる詩 「適切な世界の適切ならざる私」など山田航さんが薦める新刊文庫3冊

山田航が薦める文庫この新刊!

  1. 『適切な世界の適切ならざる私』 文月悠光(ふづきゆみ)著 ちくま文庫 748円
  2. 『バブル・コンプレックス』 酒井順子著 角川文庫 704円
  3. 『微妙におかしな日本語 ことばの結びつきの正解・不正解』 神永曉著 草思社文庫 935円

 (1)は中原中也賞の最年少受賞作となった詩集。十四歳から十七歳のときに書かれた詩が収められている。児童詩を書く現代詩人は多いが、その次に来るティーンエージャー向けのジュブナイル的な詩集がぽっかり抜け落ちている。この詩集は、そのポジションにぴったりだ。収録作の大半は、学校を舞台に十代の少女の視点で語られる詩。同年代の少年少女なら一度は感じたことがあるだろう、思春期を生きることの息苦しさが、鋭利な言葉で綴(つづ)られる。

 靴がない!/私は嬉々(きき)となって走り出した。/(先生、わたしの靴はどこですか)/ひそやかに唱える。

 「うしなったつま先」より

 大人でも子どもでもない微妙な時期の揺れ動く心理が、日常の小さな出来事から鮮やかに広がってゆく。この詩集がもし図書室にあったなら、それだけでその一角はまぶしい光源だ。

 (2)は自らを「昭和の最下級生」と称する一九六六年生まれのエッセイストによる、バブル期の回顧エッセイ。とんねるず、松田聖子、奥田民生など同世代の象徴的有名人を引きながら、「あの時代とは何だったのか」と自虐まじりに語る筆致は、ユーモラスながらも冷静。上の世代、下の世代にとっても自らの「世代」を見つめ直すすべを教えてくれる。

 (3)の著者は小学館で辞書一筋の人生を送った編集者。単語の組み合わせで特殊な意味が発生する「コロケーション」が主題。妙な新語の生息地として意外と目立つのが国会会議録。カシコぶりたい人の集積地だからなのかも。=朝日新聞2021年1月16日掲載