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「暗殺の幕末維新史」書評 暗殺とテロで始まった近代日本

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2021年02月06日
暗殺の幕末維新史 桜田門外の変から大久保利通暗殺まで (中公新書) 著者:一坂太郎 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784121026170
発売⽇: 2020/11/24
サイズ: 18cm/238p

日本史上、幕末維新期ほど暗殺が頻発した時期はない。大老井伊直弼から内務卿大久保利通に至る国家の中枢、外国人、坂本龍馬らの“志士”、市井の人々までが次々と標的となった凄惨な…

暗殺の幕末維新史 [著]一坂太郎

 近代日本は暗殺とテロで始まった。開国か攘夷(じょうい)かをめぐるテロ、「安政の五カ国条約」締結後に来日した外国人への問答無用の殺傷、明治政府誕生後の要人暗殺。とにかく感情が先行してすぐに殺害に走る。むろん殺害された側も黙っていない。報復のケースもある。欧米列強からは「危険な国」扱いされる。
 大老井伊直弼が殺害された安政7(1860)年の「桜田門外の変」は、水戸、薩摩の浪士ら18人の犯行だ。彼らの趣意書には「神州」「国体」「国賊」「天誅(てんちゅう)」と昭和20(1945)年まで続く「神国思想」の「キーワード」が出そろっていた。なるほど2・26事件もそうだった。イギリス公使オールコックや井上聞多(馨)、大村益次郎など、その他の暗殺や未遂の背後には曲解や誤解もあった。
 結局、原因は「下々の意見が上に届く『言路洞開(げんろどうかい)』のルールがなかったから」。それが決行者と取り締まる側の共通の実感であり、教訓だというのがよくわかる。