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映画「犬部!」主演の林遣都さん 動物と寄り添うことで希望を捨てずにいられる

人も動物もそんなに変わらない

――映画は、北里大学の学生たちが実際に行っていた「犬部」の活動を取材した作品がモデルになっています。林さんは原案になった本を読んでどんな感想を持ちましたか。

 保護した犬や猫の譲渡会を開催し、一匹でも多くの命を守るためにすべてを捧げようと奮闘している若者の姿というのは読んでいて清々しい気持ちになりました。「犬部」の方たちがこれまでやっていたことを「映画」という形で表現していくうえで、彼らの思いや生き方を本からしっかりと学んで、その気持ちを背負って、覚悟を持って演じなければいけない題材だなと思いました。

 保護動物をテーマにするということには様々な意見があるかもしれませんが、「犬部」の活動をはじめ、保護動物問題を一人でも多くの人に知ってもらいたいという著者の片野さんの思いが込められた本でもあるので、こういう題材に映画という形で関われたことはとても嬉しいです。

――映画では、颯太といつも一緒にいる保護犬の花子をはじめ、たくさんの動物たちが登場します。

 僕も元々動物が好きなので、共演者の人たちとも「こんなに幸せな撮影はないね」と毎日のように言っていました。花子をはじめ、撮影に参加してくれた動物たちは現場の雰囲気を良くしてくれますし、普段は抱かないような気持ちも引き出してくれて特別な存在でした。

 語弊を恐れずに言うと、僕は人も動物もそんなに変わらないと思っているんです。今回たくさんの動物たちと触れ合って、よりその気持ちが強くなりましたし、心と心で向き合うとお互いを認識し合って、共に過ごしていくことができるということを現場で常に感じていました。動物には人を変える力があると思っていますし、動物と寄り添うことで、人は希望を捨てずに生きていくことができるのではないかと思います。

© 2021「犬部!」製作委員会

――動物との共演ならではのハプニングはありましたか?

 ハプニングや撮影がうまくいかなかったことは本当に思い当たらないですね。この作品に関わった人みんなが動物のことを第一に考えていましたし、お芝居をさせようとするわけではなく、この作品に描かれている関係性を成立させるために心を通わせようとしたところに、犬たちが応えてくれたことばかりでした。台本に書かれていることで「これはできないだろうな」と思っていたことをすべて超えてくれたシーンがたくさん撮れているので、「動物たちはこんなに感情豊かで表情があるんだよ」というところを見てもらいたいです。

批判も覚悟、大切なことを伝えたい

――センターで殺処分を待つ犬や猫たちの、怯え、傷ついた目が心に深く刺さりました。林さんは動物たちのあの目や表情を間近でご覧になっていかがでしたか。

 今回の撮影で訪れた動物愛護センターを以前別の作品で見たことがあったのですが、やっぱり現地に行って見た建物の造りや、音、匂い、そこにいる動物たちを実際に目にした時は、感じるものが全然違って心がとても痛みました。ここを描くことはなかなか勇気のいることですし、センターで働く人たちの思いもあると思います。色々なことを考えさせられる映像がこの作品にはたくさん含まれていると思いますが、勇気を持って一人でも多くの人に知ってもらうことがこの映画を作る僕たちの役目だと思うので、届いてほしいですね。

© 2021「犬部!」製作委員会

――颯太は学生の頃から殺処分ゼロを目指し、「生きているものは全部助ける」という信念を曲げずに、多頭飼育崩壊している家に乗り込んだり、無償で去勢手術をしたりしていますが、その原動力になっているものは何だと思いますか。

 颯太は人に合わせることや周りの意見を聞く耳を持たないのですが、自分がやりたいと思っていることが「もしかしたら間違っているかもしれない」と不安になる瞬間もたくさんあったと思うんです。それでも自分の信念を貫けることができたのは、やっぱり花子の存在が大きかったと思います。颯太のモデルになっている太田(快作)先生も、花子と過ごす時間があるからすべての動物たちに対して同じように接することができるというようなことを仰っていたので、花子という存在が常に側にいて、一つの命に寄り添う時間が「すべての命を救う」という信念を貫けたことに繋がったんじゃないかなと思います。

――動物の事を大切に思う気持ちは颯太と一緒だけど、殺処分を少しでも減らすために動物愛護センターに就職した柴崎には柴崎の強さや信念がありますよね。

 僕は颯太と柴崎、どちらの強さもすごいなと思います。颯太の真っすぐな生き方は素直にかっこいいと思いますし、必要な存在だと思います。あそこまで信念を曲げずに生きているかと聞かれたら自信はないですけど、僕も「何事もやらないで後悔するならやってみる」といった考えは持っていますし、やってみてダメだった時に人の意見を聞き、受け入れることは心がけたいなとも思っているので、どちらにも共感しますね。

© 2021「犬部!」製作委員会

日本の起源、人の起源に興味

――作中では、「やり方は違っても目指すところは同じだろ」という柴崎のセリフが2回出てきます。学生時代の1回目と社会人になった時の2回目では、颯太の感じ方や受け取り方に変化がありましたが、林さんはこのセリフをどう捉えましたか。

 このセリフが出てくるシーンは、演じていても出来上がった映像を見ても、颯太と柴崎がすごく深い部分で通じ合っていて、本当に美しい友情関係が描かれていると感じました。最初に颯太がこの言葉を言われた時は、自分の考えとは違う方向に行こうとしている柴崎に対して感情的になってしまうんです。だけどそれは、自分が認めている存在である柴崎に、行ってほしくない道を進もうとしているのをなんとか変えたいという思いがあったと思うんです。それが年月を経て、最終的には柴崎の進む道やその道を選んだ思いを理解し、認めて、「こういう考えで戦おうとしている人は自分に必要なんだ」と思えるようになったのかなと思います。

ヘアメイク:主代美樹(GUILD MANAGEMENT)、スタイリスト:菊池陽之介

――映画は学生時代と38歳になった現在、二つの時間軸で構成されていますが、演じ方で何か気をつけたことはありますか。

 外見は自分ではどうにもできないところがあるのですが(笑)、思いという部分で言うと、颯太は動物と出会った頃に芽生えた気持ちがずっと変わらない人なので、そこのブレない強さみたいなものは大切に演じました。映画では描かれていないところで、きっと颯太も柴崎と同じようにつらい思いやくじけそうな瞬間があったと思うんです。颯太が大学を卒業してどんな16年間を過ごしてきたのかということを自分の中で整理して、そういう経験をしたから今がある、というようなものがにじみ出ればという思いで演じていました。

――林さんは学生時代から現在まで、どんな本から影響を受けてきましたか。

 中学で野球をしていたので、スポーツものや、男が好きな青春ものの漫画を読むことが多かったです。今は原作がある作品に出演する時に読むくらいです。昨年「フェードル」という古代ギリシャを舞台にした作品に出演したこともあり、最近は海外の戯曲を読むことが多いです。この舞台で神話に初めて触れて、そこから人間の起源みたいなところに少しずつ興味を持ったので 日本の起源について書かれた本も読んでみたいと思っています。

 俳優は言葉を発するお仕事なので、芝居だけではなくこういったインタビューの場でも、日本語をもう少ししっかり知っておきたいなと思うようになったので、今は日本語関連の本にも興味を持ち始めたところです。