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絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本12冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2021年11月)

【この記事で紹介する絵本】

その想像はあってるの? 『マイロのスケッチブック』

(作:マット・デ・ラ・ペーニャ、絵:クリスチャン・ロビンソン、訳:石津ちひろ/鈴木出版)

毎月、最初の日曜日。マイロはおねえちゃんと二人で地下鉄に乗って出かけます。マイロは不安と緊張でいっぱい、同時にわくわくする気持ちも抱えながら、スケッチブックを広げます。まわりにいる人の生活を想像して絵を描くと、少し気が紛れるのです……。思いもよらない展開が続くのですが、世界をしっかりと受け止め、大事なことを見逃さないマイロの姿に、私たち読者は心を打たれます。

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編集長のおすすめポイント

どんなに複雑な舞台設定だとしても、その様子が自分たちの住んでいる街とは全然違っていたとしても。読めば、すんなりと物語の中に入っていけるこの絵本。それは、マイロの心境に寄りそいながら、わかりやすく進んでいく文章に、親しみやすく愛らしい絵を描きながら、そこに多くの情報を映しだしてくれているから。「多様性」という言葉を出さなくても、今の時代に必要なのは何なのか、子どもたちにもしっかりと伝わってくる1冊です。

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その奇跡を信じることができるなら『ふしぎな月』

(文:富安陽子、絵:吉田尚令/理論社 )

空にのぼるまあるいふしぎな月。その透きとおった光を浴びると、虫たちは一斉に飛びたち妖精になり、野原では花の種が目を覚まし、海を照らせば魚たちが夜空を泳ぎまわったのです。その月の光が街を包むと、今度は眠っていた赤ちゃんたちがパチリと目を覚まし……。その次の瞬間、思いもよらぬ出来事が目の前に広がります。ああ、なんて光景! 信じられない。けれど、いつか憧れていた光景でもあるような。

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編集長のおすすめポイント

空を見あげれば、そこに月が浮かんでいる。どんな場所にいたって、同じように照らしてくれている。当たり前のことなのに、いつの間にか忘れてしまっていたりもする。もし世界がこんな不思議にあふれているのだとしたら。こんなにも力を放ってくれているのだとしたら。そう思うだけで、心が救われるような気持ちになる子がいるのかもしれない。この絵本が思い出させてくれるのです。

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幸せのかたちが違ったとしても 『あかいてぶくろ』

(文:林木林、絵:岡田千晶/小峰書店)

あかいてぶくろのみぎとひだりは、いつも一緒に出かけます。ちびちゃんの小さな手が冷たくないように、ふっくらふんわり包むのです。ところがある日、ちびちゃんはみぎのてぶくろをなくしてしまいます。通ってきた道を探しまわるのですが、どこにも見当たりません。離れ離れになってしまった、みぎとひだり。今頃どうしているだろうかと、お互いを思うのですが……。

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編集長のおすすめポイント

たくさんの魅力的な場面が続いたあと、それでもやっぱり心に強く残るのは、みぎのてぶくろとひだりのてぶくろがすれ違う瞬間。かつて、ちびちゃんの手を一緒に包みこんできたふたりだからこそ、一目見て、お互いがそれぞれ充実した時間を過ごしていることがわかるのでしょうか。この美しく丁寧に描かれた物語を味わいながら、子どもたちの心に「道は一つではないのだ」ということを、印象的に伝えてくれているようです。

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飛行機は、これまでになく高く遠くへ 『パイロットマイルズ』

(絵:ジョン・バーニンガム&ヘレン・オクセンバリー、文:ビル・サラマン、訳: 谷川 俊太郎/BL出版)

マイルズは、まえみたいにボールをおっかけなくなったし、呼んでも聞こえないことがある。そこでぼくは……。2019年に亡くなったジョン・バーニンガムの未完の構想をもとに、妻のヘレン・オクセンバリーと旧友のビル・サラマンが描きあげた愛犬マイルズの物語。ところどころに挟みこまれる、バーニンガムの描いた印象的な絵。その間を埋めるように、つながるように、丁寧にオクセンバリーの絵が物語を語っていく。

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編集長のおすすめポイント

前作『ドライバーマイルズ』で無邪気に車を運転してたマイルズだけれど、今作ではしっかりと歳をとっている。同時に前作では全てがバーニンガムの絵だったけれど、今作では3場面だけになっている。けれどそれは悲しいだけではなく、マイルズがいかに家族に愛されていたのか、バーニンガムの世界をいかにまわりの人が理解していたのか、しっかりと伝わってくる。こんな風に世界を飛び立つことが出来たなら……バーニンガムは、いつまでも私たちの憧れの作家でいてくれるようですね。

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ずっと一緒に冬を過ごしてきたのに……『わたしのバイソン』

(作:ガヤ・ヴィズニウスキ、訳:清岡秀哉/偕成社)

雪の中、静かにあらわれるバイソン。見上げるほど大きな体はいつでもあたたかく、その目は真っ黒で優しい。バイソンと一緒にいる時は、私はちっちゃなバイソンの女の子。一晩中はなしをすることもあれば、静かにただ寄り添うこともある。彼女はバイソンの何から何までが好きなのだ。そうしていくつもの冬を越えてきたふたりだったけれど、ある朝、バイソンはあらわれなかった……。

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編集長のおすすめポイント

心の底から信頼を寄せることのできる相手。なにからなにまでが好きで、体温を感じるだけで安心ができる。そんな存在があるのはうらやましいけれど、それは何も同じ人間とは限らないし、生き物でなくてもいいのかもしれない。幼い頃の記憶の一部だって、自分の心のよりどころになってくれるはず。そうやって、自分の中にある「バイソン」を探してみたくなってくるのです。

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意味があるようでないような、愉快でへんてこ『ぽんちうた』

(作:死後くん/ブロンズ新社)

ぽんちうたってなあに? 愉快でへんてこな歌のことだって。ほんとに、ほんと。変な世界。柏餅にくるまった猫、ずぼんをはいて駆け出す動物や昆虫。くしゃみは止まらん、くまの子はななめっこ。あるわけないけど、あると楽しい気もするこの世界。そこに明快な答えや決まりがないからこそ、いくら見ても飽きてこない自由な絵。そして、意味がないからこそ、強烈に耳にのこる言葉のひびき。気がつけば口ずさんでいる子どもたち。なんだか真似したくなってきたぞ。

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編集長のおすすめポイント

なんだ、でたらめな世界じゃないかと侮るなかれ。なぜなら「意味を持たない絵や言葉」をこれだけ並べようと思ったら、思いのほか悩んでしまうはずだから。目で見て楽しい、耳に聞いて面白い、そして口に出せば気持ちがいい。そんなものがぎゅっとつまった贅沢な1冊。もちろん、楽しみ方は自由です。

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この世は、こわいことだらけ!? 『かいじゅうたちは こうやってピンチをのりきった』

(作:新井洋行、監修:森野百合子/パイ インターナショナル)

どうして僕たちは、他のみんなが怖がらないことが怖いのだろう。自身も怖がりだという絵本作家・新井洋行さんと、ドクターがタッグを組んで生まれたこの絵本。高いところが苦手、注射が大嫌い。怒られるのがこわい、せまいところがこわい、おばけがこわい、じしんがこわい、わすれものがこわい……。さまざまな「こわがりさん」が並ぶページは圧巻。でも、どこか愛らしく親しみがもてる姿をしていて、友だちのようにも見えてくる。弱い自分を無理に追い出すのではなく、そのままの自分を大事にしてね。ユーモアたっぷりに、そう優しく絵本が語りかけてくれます。

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編集長のおすすめポイント

心のどこかでくすぶる、不安な気持ち。それってなんだろう? 多くの子どもたちが、そのままにしておいたり、隠したりするものです。だけどこの絵本をきっかけにして、誰かと話しながら発見することができたなら。自分が「こわがりさん」なんだと、自覚することだって大事なことなのです。答えを出すためでなく、考えを広げていくための絵本。今の時代には、特に必要とされているのかもしれませんね。

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ぼくはぼくのままがいい! 『バーナバスの だいだっそう』

(作:ファン・ブラザーズ、訳:原田勝/学研)

バーナバスは、はんぶんネズミで、はんぶんゾウ。薄暗い部屋の、棚に置かれたガラスの瓶。その中の一つがバーナバスの居場所。お店に並べられた完ぺきな人工ペットとはちょっと違う、どこか不思議な形のペットばかりが並んでいる。そう、彼らはどうやら「しっぱいさく」。ある時、危機が訪れる。「しっぱいさく」だという彼らは、つくりなおされると言うのだ。完ぺきになるってどういうことだろう。このままじゃいけないんだろうか。考え抜いた末、バーナバスは脱走することを決心し……。作者は人気絵本作家、ファンブラザーズ(テリー、エリック、デヴィンの三兄弟)。作家・画家である彼らは、子どものころから物語やキャラクターをいっしょに考えていて、今作は兄弟3人で作った初めての絵本なのだそう。

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編集長のおすすめポイント

物語に夢中になりながらも、「自分ならどうする」「自由を勝ちとるためには」「完ぺきってなに?」、そんな分岐点が数多く登場するこの絵本。くり返し読めば読むほど、彼らの世界に魅了されればされるほど、子どもたちの考え方はどんどん広がっていくのかもしれません。もちろん、それは大人の読者にも同等に刺さってきます。ふわふわな毛なみとぱっちりなおめめも魅力的ですものね……。

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死んだらどうなるの? 『キツネ 命はめぐる』

(文:イザベル・トーマス、絵:ダニエル・イグヌス、訳:青山南/化学同人)

寒い冬の林の中。食べものを探しているのはキツネ。子ギツネがじっと息をひそめ見ている前で、キツネが獲物をとらえます。やった! ところが、その時。車のライトで目がくらみ、キツネははねられ……。「生きものは死んだらどうなるの?」豊かな自然を美しい色彩で、生き生きと動きまわるキツネたちを愛らしく躍動感たっぷりに描いたこの絵本。それだけでも見ごたえがありながら、キツネの死を通し命がめぐっていく物語を、科学的根拠に基づいた内容でしっかりと伝えてくれます。

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編集長のおすすめポイント

なにも起きていないような静かな場所で、こんなにも大事な命のやりとりが、ここかしこで行われている。その現実は、ドラマチックで悲しげでもありながら、豊かで清々しい世界でもあります。自分の命も、こうしてどこかでつながっているのかもしれない。そう感じることで、「死」への漠然とした不安が少し和らぐような気がしてくるのです。

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どんなきみの存在にも、意味がある『きみはたいせつ』

(作:クリスチャン・ロビンソン、訳:横山和江/BL出版)

自分がどうしようもなく小さく思える。誰にも気にされていないんじゃないかと感じる。そんなきみにこそ、伝えてあげたいのは。「きみは たいせつだよ」ってこと。なぜかっていうとね……。みんなひとりじゃない。この宇宙の中で、生命の進化の中で、そのすべてのつながりの中で生きているきみの存在には、意味がある。原書はYou MatterというBlack lives matterにも呼応するタイトルで、子どもたちも含め、誰も排除されない社会への願いがこめられています。

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編集長のおすすめポイント

その年齢や性別、人種や性格だけでなく。悩みの大きさや種類、出来事のスケール感まで。さまざまな違いを越えて、全てを平等にとりあつかっているからこそ、どんな読者の心にもまっすぐに突き刺さるような絵本となっているのです。毎日をただ楽しく過ごして欲しい子どもたちにも、今この瞬間にも切実な悩みを抱えているような大人にも。優しい言葉の一つ一つに、心が包みこまれるような感覚を味わってもらえたら。そんな風に願ってしまいます。

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店主のせなかでゆれているのは……『ほんやねこ』

(作:石川 えりこ/講談社)

遠くに海の見える見晴らしのいい場所にあり、中に入れば壁一面の本。中心には大きならせん階段があり、店主はねこ。なんて素敵な本屋なのでしょう。今日は早めに店じまい。ねこは散歩に出かけるのです。ところが、窓を一か所閉め忘れてしまったから大変。強く風がふきこんだ時、パラパラとめくれた棚の絵本から、物語の人たちが窓の外へ飛ばされてしまい……。本の世界に触れる楽しさを、こんな形で体験させてくれるなんて! 子どもたちの姿を力強く描き続ける絵本作家、石川えりこさんの新境地です。

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編集長のおすすめポイント

どんな高い場所の本でもさっと取り出し、するするっとらせん階段を降り、早めの時間にぱっぱと店じまい。野原でごろりとからだをほぐし、ノラネコたちとは毛を逆だて立ち向かう。美しい夕日は立ち止まって堪能し、お店に帰れば毛布の中でくるりとまるくなる。どこを切りとっても、ねこらしいねこ。でも読み終わってみれば、本屋にぴったりだと感じてしまうのが不思議なのです。

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男の子の心にうかんだのは……?『まっくろ』

(作:高崎卓馬、絵:黒井健/講談社)

「こころにうかんだことを かいてみましょう」と言うと、ひとりだけ画用紙を真っ黒に塗りつぶしている男の子がいる。先生がびっくりして、「ちゃんとした えを かきなさい」と言うけれど、男の子はやめません。学校でも、家に帰っても、休みでも。大人はみんな心配顔。だけど、ある時不思議なことが起こります。男の子が塗るのをやめた時、そこにうまれたものは……?「子どもから、想像力を奪わないでください」というメッセージがインパクトを残した、衝撃のCMから20年。その内容が、CM制作者の高崎卓馬さんの文章と、黒井健さんの絵によって、新しく絵本となって誕生しました。

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編集長のおすすめポイント

男の子の手によって生みだされたものは、私たちの想像をはるかに超えたもの。驚いてしまうのも無理はありません。誰もそれを見たことがないのですから。どうして彼にはわかるのでしょう。けれど、その姿が少しずつ見えてくるにつれ、彼のまわりにも理解者が増えていき、一緒に完成させていくのです。手伝いはじめる子どもたちの様子もふくめ、しっかりと見守り、後押しすることだけが、大人の役割なのかもしれませんね。

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 絵本ナビ編集長がおすすめする「NEXTプラチナブック12選」はいかがでしたでしょうか。対象年齢も、あつかっているテーマもさまざま。気になった絵本があったら、ぜひ手にとってみてくださいね。絵本ナビ「プラチナブック」連載ページへ