100万人以上が虐殺されたといわれる、ポーランドにあるナチスドイツのアウシュビッツ・ビルケナウ収容所。1945年1月のソ連軍による解放時に最年少の4歳だったマイケル・ボーンスタインさん(米在住)が自らの経験をまとめた本が出版された。『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』(森内薫訳、NHK出版)。マイケルさんと娘で共著者のデビー・ボーンスタイン・ホリンスタートさんは「不寛容な人が増えている今の時代だからこそ、この本を手にとって」と訴える。
原題は「Survivors Club(生存者たちのクラブ)」。物語の形をとった青少
年向けのノンフィクションだ。
デビーさんは以前から父親に「アウシュビッツでの経験を話してほしい」と頼んでいたとい
う。「でも決して応じてくれなかった。後から考えると、口に出せない迫害を受けていたから
なんだけど」
もう一つの問題は、4歳ということもあり、マイケルさん自身に記憶があいまいな部分があ
った点だ。「一番鮮明な記憶は、子供専用収容所で食料を奪われ、死にかけていたぼくを同じ
アウシュビッツにいた母が救い出し、自分たちの部屋にかくまってくれたこと」と語る。
母のソフィーさんはその後、別の収容所に移され、祖母のドーラさんがマイケルさんを解放
まで守り抜いた。本では、娘のデビーさんによる親族へのインタビューなどで当時の記憶を補
い、時代背景などまで詳述している。
マイケルさんが出版を決意したのは、解放時の自分の写真が、アウシュビッツで子供は虐待
されていなかった証拠としてウェブに載っているのを見つけたからだという。「太って健康そ
うに見えると言われたが、写真が撮影されたのは解放の数日後。生き残れたのは奇跡だった。
ぼくの経験したことを多くの人に伝えていきたい」(編集委員・宮代栄一)=朝日新聞2018年10月17日掲載
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