ドイツ系ユダヤ人の政治哲学者ハンナ・アーレントとマルクスを中心に労働について研究し、著書「アーレントのマルクス」(人文書院)で労働と全体主義についてまとめた。
アーレントは「マルクスは労働を人間の本質的営みとして賛美した」と批判し、肥大化した労働が人びとを私的利益の追求へと走らせ、公共的なものの衰退を招き、全体主義へとつながると説いた。だが、百木さんは「アーレントはマルクスを誤読していたが、そこにアーレントの労働思想の中心があり、両者は近代資本主義社会への批判意識では共通していた」とみる。
大学卒業後、3年間会社勤めを経験した。「残業も多く、日本人の働き方に疑問を持った」。非正規雇用や格差社会、長時間労働、過労死などが社会問題化されつつあった。隣人との対話や政治的議論、ボランティアなど社会的活動の余裕さえない。そこに全体主義への道が開かれているのではと考える。「生活の中で労働の占める割合が大きくなり過ぎている。アーレントの思想を手がかりに働き方を考えていきたい」(池田洋一郎)=朝日新聞2018年12月26日掲載
編集部一押し!
- 著者に会いたい 大越健介さん「ニュースのあとがき」インタビュー 番組で抑えている「情」も 朝日新聞読書面
-
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「湖の女たち」主演・福士蒼汰さんインタビュー 刑事の歪んだ支配欲、感覚で演じきった 根津香菜子
-
- 新作映画、もっと楽しむ 映画「陰陽師0」奈緒さんインタビュー 平安時代の女王役「負の感情を『陽』に。自分の道は変えられる」 根津香菜子
- 図鑑の中の小宇宙 「すごすぎる絵画の図鑑」 フェルメールの名画の黄色の正体は…… 岩本恵美
- 鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第13回) 「女性は存在しない」!? メイル・ゲイズ(男性の眼差し)を超えて 鴻巣友季子
- 本屋は生きている でこぼこ書店(埼玉) 本を介して人が集まり、学ぶ場所。元バスケ青年が始めた小さな挑戦 朴順梨
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社