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忘れたくない、特別な夏の記憶 絵本「海のアトリエ」ほか子どもにオススメの3冊

「海のアトリエ」

 おばあちゃんの部屋の壁に女の子の絵が飾ってある。「この子は、あたしよ」と、聞いてびっくり。おばあちゃんが孫に特別な夏の思い出を語る。

 学校でいやなことがあり、夏休みも家に閉じこもっていた「あたし」は、母さんの友達の絵描きさんに誘われ、海辺のアトリエに泊まりに行く。本を読み、食事や家事をし、絵を描き、逆立ちをし、1週間をふたりで過ごす。いつもとちがう、ゆるやかな時間と海の風。適度なほったらかしとゆかいな思いつきの共有。絵描きさんは、子どもを子ども扱いしない大人だった。

 一枚ずつの場面が忘れたくない記憶の印画のようにいとしく描かれている。小学生から祖父母世代まで、閉じていた心や記憶が開かれる。(堀川理万子作、偕成社、税込み1540円、小学校低学年から)【絵本評論家・作家 広松由希子さん】

「お話のたきぎをあつめる人 魔法の図書館の物語」

 本やお話が大好きな女の子ステレは、おじいちゃんと2人きりで森のはずれに住んでいました。ある日おじいちゃんが、だれも住んでいないお城の中に「お話の図書館」があることを教えてくれます。ステレはお城に行ってみますがその図書館のドアはなかなか見つかりません。そこで……。オランダ王国の妃殿下が人気作家と共に、本やお話の楽しさを子どもたちに伝えたいと願って生まれた物語。本を読んだりお話を語ったりする時のステレのうれしそうな表情を見ると、心がほっこりしてきます。(ローレンティン妃&P・v・ローン作、西村由美訳、佐竹美保絵、徳間書店、税込み1540円、小学校中学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「あら、そんなの!」

 ねこのプーはお友だちにお誕生日の招待状をもらいます。はじめてのことにどうしたらいいかわからないプーは、なかよしのたまみさんに相談することに……。プーが抱えるたくさんの心配を、たまみさんは「あら、そんなの!」と事もなげに解決します。
 はじめてって不安なもの。でも難しく考えないで。「あら、そんなの!」と飛び込んでしまえばきっと楽しい! 多少の不自由も軽々と越えていけそう。真っ白な表紙もすがすがしく、読後は小さな悩みなんて吹っ飛びますよ。(高橋和枝作・絵、偕成社、税込み1320円、5歳から)【丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵さん】=朝日新聞2021年5月29日掲載