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転換へ視点の変化うながす「戦後日本政治史」 詫摩佳代が選ぶ新書2点 

 内政と外交は深く連動する。流動的な国際情勢下ではなおさら、骨のある外交を展開するには内政面での基盤強化が不可欠である。

『戦後日本政治史』

 境家史郎『戦後日本政治史』(中公新書・1056円)は、日本政治が様々な外圧・内圧に呼応する形で種々の改革を経てきたこと、他方、戦後政治にビルトインされた憲法問題を背景として、55年体制型政治からの転換を図れない姿を鮮明に描き出す。
★境家史郎著 中公新書・1056円

『日本型開発協力 途上国支援はなぜ必要なのか』

 松本勝男『日本型開発協力 途上国支援はなぜ必要なのか』(ちくま新書・1078円)は、日本の途上国支援の展望と課題を、著者の豊富な現場経験を踏まえて論じる。新興国による戦略的な開発支援や、開発協力目的の多様化に伴い、日本はより戦略的な支援策を講じていく必要があり、そのためにも分野横断的な協力を可能とする国内制度の構築が必要だと論じる。
★松本勝男著 ちくま新書・1078円

 境家氏は、今後も日本政治が抱える憲法問題が解消されない限り、「この国の『戦後』が終わることはないだろう」と締めくくる。松本氏が指摘するような俯瞰(ふかん)的な視点で、国際社会とそこにおける日本の立ち位置を捉え、日本の役割や安全保障に関し現実的な議論を展開していく必要があるだろうし、そうした視点の転換が日本の政治を変え、外交と安全保障の強化にも寄与していくのではないか。=朝日新聞2023年7月1日掲載