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長谷川克「ツバメのひみつ」 笑えて学べる愛らしき鳥の生

 ツバメという鳥は、春にやってきて軒下に巣を作り、秋には遠くに去っていく、典型的な渡り鳥である。これまでずっと、身近な存在であって愛されてきた。それがこの頃、あまり見られなくなっているように思う。

 それは、東京に住んでいる私の印象だ。私は1990年代に、大学の教養課程の授業の一環で、小田急線沿線の駅などに巣をかけているツバメの行動を観察したことがあるが、今はもうそんな光景はまれになってしまった。本書によると、現実にそうであるらしい。まだ絶滅が危惧されるほどではないが、確実に減ってきている。

 著者は、もう15年以上にわたり、実際にツバメの行動を観察して研究を続けてきた、ツバメのプロである。本書は、このツバメという、ごくありふれた鳥の、形態、五感のあり方、飛翔(ひしょう)能力、配偶、子育て、渡りなどなどについて、およそすべてのことを解説している。帯に書かれているとおり、「ツバメのひみつ」を1から10まで教えてくれる。バードウォッチングが趣味というわけではないけれど、毎年やってくるツバメについてもっと知りたいと思う人には、絶対お勧めの一冊だ。

 ツバメはあんなに敏捷(びんしょう)に空中を飛んで餌を獲(と)るのだから、それに特化した翼その他の構造を持っているのだろう。だから、あんなに脚が小さいのだ(ということ、知ってました?)。

 一夫一妻でかいがいしく子育てするので有名だが、その結婚と子育ての実態はどうなのだろう? 実は、離婚もあるし、ヒナを遺棄することもあるし、他の子どもを殺すこともある。生きるのはかくも難しく、今の人間の道徳などで判断できるものではないことがよくわかる。

 さて、ツバメが自分の家の軒に巣をかけたらどうするか? 応援したい人も、よそに行って欲しい人も、ツバメに優しい対処をするにはどうしたらよいか。プッと笑える駄洒落(だじゃれ)を交えて、ツバメとヒトを考える好著。=朝日新聞2023年7月8日掲載

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 緑書房・1980円=4刷1万4500部。2020年刊。「人気の鳥なのに生態を詳しく解説した本が少なく、語り口もユーモラスで読みやすいため支持が広がってきた」と担当者。