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小川幸司さん「世界史とは何か」インタビュー 「覚える」から「考える」へ

小川幸司さん

 近年「大活躍」と言っていい高校社会科教員の一人だろう。

 『岩波講座 世界歴史』(全24巻)の編集委員に名を連ね、第1回配本にシリーズ全体の展望を示す論考を寄せた。2022年開始の新科目・歴史総合に合わせて共著『世界史の考え方』(岩波新書)を出版。今回の新著にも注目が集まる。

 東京大学で西洋史学を学び、研究者ではなく教員の道を選んだ。「学問の細分化になじめず、広い視野で歴史を捉えたかった」という。

 松本サリン事件や日の丸・君が代の問題などを題材に、生徒たちと学び、対話し、考える実践を積み重ねてきた。「人間も人間の歴史も多面的なもの。政治的な対立の道具ではない、事実に即し、人と人が関係を築くための歴史とは何か。歴史を通じて考えながら一人ひとり違う歴史像を練る教育を目指してきた」

 新著では、対話の条件として「いのちへのリスペクト」や互いに対等な関係、自説の相対化、安心できる場づくりなどを挙げた。どんな学力の生徒にも、充実した人生のために歴史を学ぶ面白さは伝わると信じる。

 今春、自ら望んで長野県蘇南高校の校長を離れ、同県伊那弥生ケ丘高校の現場教員に復帰した。「定年退職まであと数年。この数年で今後の歴史教育の大勢が決まる。日々の現場に戻る以外の選択はなかった」

 新しい歴史教育が「思ったほど変わっていない。変えてもうまくいっていない現場が多いのでは」と、もどかしい思いを吐露する。記者が学校を訪ねた日の授業では、漫画や映画を入り口に、古代ローマ史を解説。王政、貴族政、民主政の「混合政体」をめぐる思考と対話に時間を割いた。新著が「覚える」から「考える」への転換の手がかりになればと願っている。(文・写真 大内悟史)=朝日新聞2023年8月5日掲載