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シンプル&ミニマルに進化したレシピが人気! 「第10回 料理レシピ本大賞 in Japan」授賞式レポート

 今回エントリーされたのは全134作品。その中から、全国の書店員からなる「書店選考委員」178名と料理専門家である「特別選考委員」が受賞作を選考しました。「一般の人が作りやすいか」「おいしさや健康などのさまざまな面で日本の食文化に貢献しうるか」というポイントを重視して選ばれた13作品は以下になります。

「第10回 料理レシピ本大賞 in Japan」受賞作品

■料理部門

【大賞】

【準大賞】

【入賞】

■お菓子部門

【大賞】

【準大賞】

■ジャンル賞

【こどもの本賞】

【エッセイ賞】

【コミック賞】

■特別部門

【プロの選んだレシピ賞】

【ニュースなレシピ賞】

やる気1%でも大丈夫! 料理にかかる労力を最小化

 料理部門の大賞は、『やる気1%ごはん』(KADOKAWA)。「誰でも簡単につくれる」をモットーにSNSで活躍する料理家・まるみキッチンさんの初めてのレシピ本です。工程や説明文は最小限、主材料も少なめに、レンジや炊飯器を駆使して美味しく作れる火加減不要のレシピも多数収載し、タイトルどおり「やる気1%」でも美味しく作れる工夫がされた一冊になっています。

左から、アンバサダーを務める天野ひろゆきさん、まるみキッチンさん

 「僕はプロの料理人の方々と比べたら知識などがない素人だと思うんですけど、その代わり面倒くさがりなところは皆さんに近いと思うので、いかに手間や材料・調味料を省いていけるかというところにすごくこだわりました。家事や育児、仕事などでヘトヘトな時でもパッと作れる料理を500品も入れたので、献立すら考えなくても大丈夫だと思います」(まるみキッチンさん)

 本書に収載された500ものレシピの中から試食コーナーに登場したのは、「極上のチキン南蛮」。アンバサダーの天野さんは、ひと目見るなり「やる気1%に全然見えない!」とコメント。モモ肉に下味をつけていないと聞き、「下味がついているくらい、衣がいい感じに甘酢のソースを吸っているし、煮詰めているわりには(表面の)カリカリ具合がちゃんと残っている」と、美味しそうに食べていました。

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失敗しないお菓子作りで成功体験を

 お菓子部門大賞は、人気パティスリー「DEL'IMMO(デリーモ)」の江口和明さんによる『とんでもないお菓子作り』(ワニブックス)が受賞。自身のYouTubeチャンネルで紹介した人気レシピから厳選し、「ふわふわのスフレチーズケーキ」や「究極のショートケーキ」など基本のお菓子を紹介しています。全工程写真付きで「お菓子作りのなぜ?」も丁寧に解説。基本の道具や材料、お菓子の保存方法についてもポイントがまとめられているので、お菓子作り初心者にもおすすめです。

江口和明さん

 どんなところが「とんでもない」のかと聞かれ、「(お菓子作りの常識を疑って)砂糖を分けたり湯煎したりといった手間の掛かる工程で不要なものはなくし、絶対に失敗させないことをテーマに作った本」と答えた江口さん。「今までレシピ本を見て失敗されてしまった方も、もう1回チャレンジしていただいて、ぜひこれで成功体験を味わってもらえたらうれしいです。失敗しませんので」と自信を覗かせました。

 『とんでもないお菓子作り』から「濃厚ガトーショコラ」を試食した天野さん。ひと口頬張ると「めちゃくちゃ濃厚。でもチョコだけではない、香ばしさもある。これが(順番に材料を混ぜて焼くだけと)そんなに簡単にできちゃうんですか!?」と驚きの表情を見せました。

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野菜の魅力を引き出すコツが満載

 料理部門の準大賞には、『JA全農広報部さんにきいた 世界一おいしい野菜の食べ方』(KADOKAWA)が選ばれました。X(旧Twitter)で人気のJA全農広報部(@zennoh_food)がこれまで発信してきた野菜の人気レシピや食材豆知識をまとめた一冊。野菜を美味しく食べるテクニックが詰まっています。

JA全農広報部・福田敦子さん

 「シンプルで簡単ながらも食材そのものの美味しさが楽しめるレシピをたくさん載せています。スーパーなどで『この野菜はどうやって食べるんだろう?』と思ったときに、この本を見ながら料理をしていただきたいです」と話すJA全農広報部の福田敦子さん。「こうしたレシピ本が成り立つのは、私たちが料理をしたいときに食材がすぐに手に入る環境があるからこそ。それを支えてくださっている生産者の方や流通に携わる方、食に携わる全ての方にも感謝申し上げたいです」という言葉も印象的でした。

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若山曜子さんの定番おやつ

 お菓子部門の準大賞は、料理研究家・若山曜子さんの『はじめまして、おやつ』(マガジンハウス)。イースト不要のドーナツやレンジで作れる蒸しパン、100回以上焼いたパウンドケーキなど、若山さんが普段からよく作っているという焼き菓子やデザート45品を集めたレシピ本です。

若山曜子さん

 「この本はオーソドックスなおやつの基礎の本というわけではなくて、私が今まで作ってきたおやつの中で美味しくて手軽に作れるものを集めました。アボカドのレアチーズケーキやグレープフルーツ風味のプリンなど、みなさんが初めて食べる味もきっとあると思いますが、それもまた楽しいかなと。口に合わない可能性もありますが、まずは試していただきたいです」(若山さん)

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日めくりカレンダーのようなおにぎりレシピ

 料理部門入賞を果たしたのは、『毎日おにぎり365日』(自由国民社)、『リュウジ式 至高のレシピ2』(ライツ社)、『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』(主婦の友社)の3作。

 『毎日おにぎり365日』は、2年以上ほぼ毎日おにぎりを握り続けInstagramで発信してきた日々おにぎり/ゆこさんによる、おにぎりレシピ本です。定番から変わり種まで、日付ごとにおにぎりレシピが並び、カレンダーをめくるように今日のおにぎりを選べるのが楽しい一冊。始めた頃は10種類ぐらいで終わってしまうかもしれないと思っていたそうですが、今ではなんと500種類ほどのレシピがあるのだとか。

日々おにぎり/ゆこさん

 「あなたにとって、おにぎりとは?」という質問を投げられると、「食べてすごく元気が出たり、ほっこりしたりする食べ物。それと握ることでも幸せになれるものだと思います。やっぱり愛情がないとギュッと握ることはなかなかできないので、握ることも楽しんでいきたいです」と、おにぎりへの熱い思いを語りました。

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料理上手を名乗れる決定版シリーズ

 今回で5度目の受賞と、もはや料理レシピ本大賞の常連となったリュウジさん。昨年の大賞受賞作の第2弾となる『リュウジ式 至高のレシピ2』は、台所に立つ人に前作よりもさらに寄り添った一冊だといいます。「白米の炊き方や焼き鮭、目玉焼きなど、毎日使える素朴なレシピを詰め込みました。1、2の両方があればもう料理上手って言っていいと思いますね」と自信たっぷり。天野さんから「次の(レシピ本の)アイデアは?」と聞かれると、「もう今月出しました。『虚無レシピ』という、今回の『至高』とは真逆のもの。やる気ゼロでも寝起きでも作れます」と即答。止まるところを知らないリュウジさんの勢いは来年も続きそうです。

リュウジさん

>>「料理が教えてくれたこと」リュウジさんインタビュー

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ヘルシーで手に入りやすい鶏むね肉に特化

 『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』は、日本料理店「賛否両論」店主・笠原将弘さんが「鶏むね肉」だけに絞って作ったレシピ集。「パサつきやすい」「調理に手間がかかる」などの悩みが多い鶏むね肉を美味しくするテクニックが満載です。

笠原将弘さん

 「鶏肉の中でもむね肉しか使わないと、自分を追い込みました。実家が焼き鳥屋で、子どもの頃から鶏肉をいっぱい食べて育ちましたし、いろんな鳥料理を親父からも教わりましたので、レパートリーはあるんですけどね。(鶏むね肉に絞ったのは)高タンパクでお求めやすい価格というのと、料理人目線で言うと、切りやすくていろんな形に切れるので、味付けは和洋中問わないから。今度は手羽だけ、砂肝だけというのもやってみたいですね」(笠原さん)

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節目を記念した新たな賞も

 第10回を記念して、世相や時代を反映したニュース性のあるレシピ本に贈る「ニュースなレシピ賞」が新設されました。選ばれたのは、『笠原将弘の 毎朝 父さん弁当』(KADOKAWA)と『地球のかじり方 世界のレシピBOOK』(Gakken)の2作です。

 『笠原将弘の 毎朝 父さん弁当』は、料理人の笠原さんが毎朝家族のためにお弁当づくりに励んだ実体験から生まれたお弁当レシピ本。料理部門入賞とダブル受賞となった笠原さんは、「たくさんレシピ本を出してきましたけど、いつ(料理レシピ本大賞の授賞式に)呼ばれるのかと思っていたので、とてもうれしいです。この本は、これからお弁当作りをしたい方にはもちろんおすすめですし、お弁当に入れなくてもおつまみやご飯のおかずにもなるような料理を紹介しているのでふだん使いもできて、我ながらいい本だなと思います」とコメントしました。

 一方の『地球のかじり方 世界のレシピBOOK』は、日本で入手できる食材と調味料を使って62の国と地域の名物料理89品を完全再現できるレシピを収録。家にいながらにして、世界のグルメを楽しむことができ、海外旅行気分や外食気分が味わえる一冊になっています。

地球の歩き方編集室・日隈理絵さん

 「グルメは旅を盛り上げる重要な要素。制作していたのがコロナ禍真っ只中で、海外旅行には行けない日々が続いたので、このレシピ本で作って味わっていただいて、いつかこの国に行ってみたいなど、世界をちょっとでも身近に感じてもらえる本になったらうれしいです」(地球の歩き方編集室の日隈理絵さん)

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かつての家庭料理を参考にシンプルを突き詰めて

 料理の専門家や料理店のオーナーで構成される特別選考委員が料理部門入賞作品の中から選ぶ「プロの選んだレシピ賞」は、稲田俊輔さんの『ミニマル料理』(柴田書店)が受賞。本書は、どこまで食材を絞ってシンプルなレシピにできるのかを突き詰め、かつての家庭料理のエッセンスを現代向けに紹介するレシピ本です。

稲田俊輔さん

 「この本で提案した一番シンプルなレシピをスタート地点に、一人ひとりの方がちょうどいい自分自身の味を作り上げてもらうことを意図しました。僕は古い家庭料理のレシピ本マニアで、昔のレシピ本からヒントを得た部分もたくさんあります。かつての家庭料理ってすごく新鮮に映るんですよね。ただし、今の時代だとそのまま再現するのは難しいので、時代に合わせる形で、かつての家庭料理の進化系を目指しました」(稲田さん)

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定番料理で家庭料理をラクに

 エッセイ賞は、ウー・ウェンさん『10品を繰り返し作りましょう』(大和書房)に贈られました。仕事をしながら育児もしてきたウー・ウェンさんが長年作り続け、家族の健康を守ってきた基本の10品を紹介する一冊。季節の野菜でアレンジ可能なので、レパートリーも広がります。

ウー・ウェンさん

 この10月で日本に来て34年目になるというウーさん。「豊かな日本で子どもたちにいろんなものを食べさせようとすごく頑張っていたのですが、結果としていつもの食卓にあがる季節の料理が一番人気。いつもの料理を繰り返し作ることによって完成度も高くなりますし、料理をすることは避けて通れないので、みなさんが自分の十八番を手に入れられたらラクになれると思って作りました」と、本書に込めた思いを語ってくれました。

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疲れた人にお夜食を。自分のためでも誰かのためでも

 コミック賞は、昨年『泣きたい夜の甘味処』で同賞を受賞した中山有香里さんが『疲れた人に夜食を届ける出前店』(KADOKAWA)で2年連続受賞となりました。とある町の片隅でクマがはじめた夜食の出前店を舞台に、従業員のサケ、ゴリラ、ネコをはじめ、魔王や天使など、さまざまなキャラクターが登場します。

 看護師として働きながら作家活動をする中山さんは、「疲れた人にぜひ1人でも多く読んでもらえたらなと思っています。自分のために夜食を作ってもらってもいいし、周りの誰かに作ってみようかなって思ってもらえたら、それだけで十分です」とコメントしました。

中山有香里さん

>>「泣きたい夜の甘味処」中山有香里さんインタビュー

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人気絵本「パンどろぼう」シリーズ初のレシピ本

 こどもの本賞は、『パンどろぼうのせかいいちおいしいパンレシピ』(KADOKAWA)が受賞。「パンどろぼうの食パン」や「かわいいしろくまパン」など、柴田ケイコさんの人気絵本「パンどろぼう」シリーズに登場するパンを再現できるレシピ本です。わかりやすい工程で、子どもも大人も楽しめます。

 原作者の柴田さんも「親子で楽しくパン作りができる、新たな親子のコミュニケーション本なのではないかなと思っています。ぜひこれからパン作りにトライしてみたい方にもおすすめです」と太鼓判を押します。

吉永麻衣子さん

 料理を担当した吉永麻衣子さんは、「顔はバランスが少し崩れただけで全然違う顔になってしまうので、私だけでなくて読者の方にも同じように再現できるようなレシピにする点が難しかったです」と制作の苦労を振り返り、「原作者の柴田先生と読者の方をがっかりさせないように、とにかく忠実に絵本のパンを再現したいと思って頑張ってきたので、かわいいと言っていただけて本当にうれしいです」と喜びを噛み締めました。

>>絵本「おいしそうなしろくま」柴田ケイコさんインタビュー

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 受賞作品を集めた「料理レシピ本大賞入賞フェア」を一部書店で開催中です。ぜひこの機会に、新しいアイデアやさまざまな工夫に満ちたレシピ本を手に取ってみてください。