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二宮香乃「珍獣のお医者さん」 エキゾ治療とは、新米獣医ドラマ

(C)二宮香乃/KADOKAWA

 たいていの動物病院は犬猫とせいぜいウサギやハムスターぐらいしか診ない。しかし、今やペットも多様化し、爬虫(はちゅう)類や両生類、その他の動物を飼う人も増えている。本作の舞台はそんな珍獣飼いたちの駆け込み寺だ。

 念願の獣医になったものの犬アレルギーを発症し就職先の病院をクビになった青年が、犬猫以外の動物(エキゾチックアニマル)専門病院の門を叩(たた)く。そこでいきなり近所の珍獣マニアの家の火事で次々運び込まれてくる動物の治療を手伝わされる羽目に。持ち方すらわからず戸惑う彼を尻目にテキパキと処置を進める院長と看護師。が、学校では習わないやり方に引くのではなく「スゴイ治療法ですね……!」と目を輝かせる青年に伸びしろを感じた院長は彼を雇うことにする。

 明朗な絵柄は好感度大。型破りながらクールで凄腕(すごうで)の院長と素直で勉強熱心な青年の凸凹コンビの掛け合いが楽しく、亀、ヤモリ、蛇、ワニ、ウサギなどの生態や治療法も興味深い。コミカルな中にも命を扱う仕事の真摯(しんし)さがあり、新米獣医の成長ドラマとしても読み応え十分。「細かい技術や方法は違っても犬猫も亀も人間も同じ生き物ですから」との院長の言葉には深くうなずくしかない。=朝日新聞2023年9月16日掲載