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「科学技術の軍事利用」書評 生命倫理学者の目で問い直す

評者: 保阪正康 / 朝⽇新聞掲載:2023年10月14日
科学技術の軍事利用 人工知能兵器、兵士の強化改造、人体実験の是非を問う (平凡社新書) 著者:橳島 次郎 出版社:平凡社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784582860320
発売⽇: 2023/07/19
サイズ: 18cm/207p

「科学技術の軍事利用」 [著]橳島次郎

 科学技術と軍事は相互補完の関係にある。それが組織化したのは紀元前4世紀のアレクサンドロス大王の時からで、科学者の大半は軍事に協力したという。以来、第2次世界大戦の原子爆弾の開発まで、その関係が続いてきた。しかしここにきて科学技術は人類の生命倫理を崩壊させる状況に達している。DNAの配列を自在に変えるゲノム編集は、「新規の生物兵器の開発」を可能にするに至る。
 本書はそうした「軍民両用技術」を、生命倫理学者の目で問い直そう、いや市民の目で監視しようという狙いの書である。
 戦争を機械に委ねるのは「人間の尊厳と人権」をそこねる。高度の頭脳、人間の指令なしに識別した敵を殺傷する致死性自律兵器の開発も容易になっている。
 兵士の強化改造を目的に、恐怖を感じない兵士や戦闘を好む兵士を作るために遺伝子操作を行える。フランス、米国の議論は禁止の勧告である。日本も取り組みが必要だと痛感する。