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「離れていても家族」書評 生活の豊かさに必要な家事時間

評者: 藤田結子 / 朝⽇新聞掲載:2023年10月14日
離れていても家族 著者:品田 知美 出版社:亜紀書房 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784750518060
発売⽇: 2023/08/04
サイズ: 19cm/308p

「離れていても家族」 [著]品田知美、水無田気流、野田潤、高橋幸

 今年のノーベル経済学賞は、男女の収入格差の原因を研究した米ハーバード大のクラウディア・ゴールディン教授の受賞が決まり、話題となった。素晴らしいことだが、日本でも米国よりずっと厳しいジェンダー格差の中、女性研究者たちがその格差の研究を行ってきた。男性たちはそれをきちんと評価してきたのだろうか。本書は、4人の社会学者が、男女の収入格差と密接に関わる家族のあり方を論じる一冊だ。
 本書によれば、2016年、末子が小学生の男性(ひとり親を除く)は1日3時間毎日残業するような状態にあった。イクメンがもてはやされていた時、男性の仕事時間は増え、家事時間は減っていた。一方、子育てする女性は有業でも家事時間が長い。真の働き蜂とは日本の女性だという。
 リビングの日英比較が実に興味深い。英国のリビングは子どものモノがみあたらない。友人や親族を自宅に招いて食事をするため、リビングは社交空間でもある。一方で、日本のリビングは、子どものおもちゃや作品が置かれ、外部に閉じられた「母と子どもの空間」。リビング学習もその延長にあるそうだ。
 英国では食事を共にとることが仲間であることの徴(しるし)として機能し、小学生の子がいる場合、家族全員が夕食時に一緒に過ごす。日本では、男性たちは家族よりも職場仲間と飲食を共にする。子どもも夕方から塾にでかける。日本の家族は、時折集合すればよい関係にあり、「離れていても家族」なのだという。
 だが、日本や韓国のように、労働者を長時間働かせ続け、資本や国家に都合のいい家族のあり方と蜜月を過ごしてきた国は厳しい出生率低下にみまわれている、と本書は鋭く指摘する。生活の豊かさには、家事をする時間とそれを保障する制度が必要だ、と。
 仕事の方が価値があると信じて家事を避けてきた男性に読んで欲しい。新たな視点を得られるはずだ。
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しなだ・ともみ 早稲田大招聘研究員▽みなした・きりう 国学院大教授▽のだ・めぐみ 東洋英和女学院大専任講師▽たかはし・ゆき 石巻専修大准教授。