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呉勝浩さん「Q」 長編恋愛小説、「悪人」×BTS×「AKIRA」で見すえた反権威

巨編を手がけた呉勝浩さん=大阪市内

 恋愛小説を書いたら、どうなるか。熱量の高いミステリーで勢いを増す呉勝浩(ごかつひろ)さんが自らにチャレンジしたのが新刊「Q」(小学館)。若い登場人物たちの熱さと疾走感に彩られた自己最大長編だ。

 清掃会社に勤める町谷亜八(あや)(ハチ)は傷害事件を起こした過去があり、血のつながらない姉ロクとともに秘密を抱えていた。2人の弟キュウはダンスの才能に恵まれ、衝撃的な形で世に躍り出ていく。だがコロナ禍で閉塞(へいそく)感の強まる中、カリスマとなった彼への殺害予告が届く。

 はりつく不穏な空気感、ほとばしるエネルギー。世界観の入り口は吉田修一さんの「悪人」だという。殺人犯が女性と逃避行する傑作小説だ。「1ページ書いて無理だなと思ったけれど、やさぐれた感じの出だしに香りは残っているかなと」

 ハチは暴力的な過去から抜け出し、なお暴力に揺さぶられても自分を失うまいとこらえる。対極にあるキュウのきらびやかな世界。ダンスシーンが実に生き生きとしている。ここは韓国の人気グループBTSを参考にした。「トップに上りつめたパフォーマンスはすごい。こんな世界があったんだと動画で繰り返し見て、取りこんだ」

 そして、クライマックスのイメージのヒントは大友克洋さん原作・監督のアニメ映画「AKIRA」からだった。「アキラはパンクですから」とニヤリ。

 つまり、「悪人」×BTS×「AKIRA」のイメージがもとにある恋愛小説だ。「わけがわかりませんよね」と言いながら、呉さんの目線は強い。

 イメージを重ねた上で、この作品からにじみ出るのは反権威といった言葉だ。いまの社会への抵抗であり、自分を解き放つこと。

 コロナ禍が社会にたまっていた危ういものをあぶり出したと呉さんは感じる。「穏やかな日常を守るために、異様な情熱が必要になっているんですね」

 恋愛小説を書こうという思いは貫いた。「私とあなたをイコールに結ぶのが異様な情熱だと定義するなら、これは恋愛小説だといえると思う」

 2015年に作家デビューし、大阪で執筆を続ける。力強い筆づかいで「スワン」「おれたちの歌をうたえ」「爆弾」と3度、直木賞候補となっている。

 作家として一つの目標がある。「読み終わった時、読者の体温が1度上がっていたら、仕事ができたのかなと思う」(河合真美江)=朝日新聞2023年11月15日掲載