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「安楽死が合法の国で起こっていること」 「安直」で「安価」な代替案になってしまう実態 杉田俊介が選ぶ新書2点

『安楽死が合法の国で起こっていること』

 目を逸(そ)らさず読んでほしい。児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』(ちくま新書・1034円)によれば、安楽死の対象は終末期のみならず、子ども、認知症患者、精神/発達/知的障害者、QOLの低い人などに拡張されつつある。一般の人々が「素朴な善意」でそれを後押しする。尊厳死、安楽死、医療幇助(ほうじょ)自殺、緩和ケアなどの区別すらろくに知らないままに。その時安楽死は福祉や医療資源の不足に対する「安直」で「安価」な代替案となる。「患者の自己決定権」すらなし崩しの日本では、死ではなく本人・家族の生の「引き裂かれの痛み」にこそ真の尊厳がある、という確認が何より大切だ。
★児玉真美著、ちくま新書・1034円

『ダーウィンの呪い』

 千葉聡『ダーウィンの呪い』(講談社現代新書・1320円)によれば、ダーウィンの思想は様々に誤解され誤読されつつ、善意によって悪を為(な)すという「呪い」として機能してきた。進化と進歩の混同。生存闘争や適者生存をめぐる誤解。そして優生学……。進化論を正しく賢く知れば決して誤らない、というのではない。誰もが誤りうるし、呪いにかかりうる。おそらく進化論の認識自体に、人間にはどこか耐え難いような過酷さがあるのだろう。その過酷さの先に、無限に複雑な生命の素晴らしさもあるのだろう。やはり目を逸らさずに学び続けるしかない。
★千葉聡著、講談社現代新書・1320円=朝日新聞2023年12月2日掲載