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「関西フォークとその時代」書評 文学運動として位置づけ直す

評者: 有田哲文 / 朝⽇新聞掲載:2023年12月16日
関西フォークとその時代 声の対抗文化と現代詩 著者:瀬崎 圭二 出版社:青弓社 ジャンル:芸術・アート

ISBN: 9784787274588
発売⽇: 2023/10/27
サイズ: 19cm/322p

「関西フォークとその時代」 [著]瀬崎圭二

 関西フォークとは、1960年代から70年代にかけて、関西を中心に広がった音楽のうねりである。アングラ・フォーク、反戦フォークとも呼ばれたこの時代の〈うた〉を、本書は文学運動として位置づける。
 出発点は、難解きわまりない戦後現代詩への反発である。詩人たちは、詩の朗読やシャンソンに活路を求め、一部の者はフォークソングに出会った。フォークの側にも高田渡のように、無名の詩人を父に持ち、現代詩を読みあさってきた男がいた。日常のことばを求めた詩の運動と、単純なコード進行の音楽が交わり、若者文化を一変させた。
 作り手、歌い手としてとりわけ印象的なのが友部正人だ。「あゝ中央線よ空を飛んで/あの娘の胸に突き刺され」(「一本道」)。彼に接した谷川俊太郎は、話し言葉と書き言葉のほかに「歌い言葉というものがあるのではないか」と感じたという。〈ことば〉と〈うた〉の力を確信させてくれる1冊である。