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若林理央さん「母にはなれないかもしれない」 産みたくない女性もいること、知ってほしい

子どもがほしいと思えない女性たち

 私たち女性には権利がある。妊娠・出産・中絶について十分な情報を得て、産むか産まないかだけではなく、いつ、何人子どもを持つかといった、「生殖」に関するすべてのことを自分で決められる権利が。これをリプロダクティブ・ライツと呼ぶ。
 きっと子どものいない私たちの苦しみの根底には、昔よりはましになったとはいえ、日本は今も男性中心の社会であるという事実が横たわっている。

 会社員の友人は「うちの会社の経営幹部はほとんど男性だけど、女性を抜擢する時は子どもがいる女性が選ばれている」と言っていた。
 政治家や企業の経営者の中には、要職に女性を登用すれば良いと短絡的に考えている人もいるのではないだろうか。その女性に「子育てをしている」という肩書がつけば、国も企業もイメージアップにつながる。
 男性は子どものいる人もいない人も、要職に就いているのに、女性は子どものいる人を優先して登用する。彼らはきっと無意識なのだろう。無意識のうちに「産んだ女性を活躍させている。良いことをしている」と思っているのだろう。

 それからもうひとつ、私は政治の中心にいる男性や、子どものいる女性に言いたいことがある。
 「産まない女性はみな、社会が変われば出産するだろう」というのは思い込みだ。
 彼らは女性のリプロダクティブ・ライツを無視している自覚がない。もしくはその権利を知らない可能性すらある。少子化対策より先に、リプロダクティブ・ライツの認知を広げるのが、社会のために必要なことなのではないだろうか。
 政治も企業も、子どものいる人、子どものいない人、結婚している人、結婚していない人など、さまざまな背景を持つ女性たちが男性と同じように議論できるようにしてほしい。
 そうすれば女性同士の分断は改善されるはずだ。

 そんな社会的な背景がありつつも、私は産まない意志をかためた。社会に自分を合わせる必要はないからだ。
 そしてそんな考えを持っているのは私だけではない。
 3年ほど前、友だちから結婚が決まったとLINEが来た。
 「おめでとう! お祝いしよっか」
 グループ付き合いが苦手な私たちは、ふたりで食事することになった。気遣いができてやさしい彼女は、世の中で「女性らしい」とされる魅力があり、母親になることを周囲から期待されているのだろうなと感じた。
 どのような会話の流れからだっただろう。よく覚えていないが、「子どもがほしいと思えなくて」と彼女が打ち明けた。
 「身体も女性、性自認も女性なのに産みたくないのは自分だけかも」と悩んでいたそうだ。
 そして、彼女も私が投げかけられたのと、ほぼ同じような呪いの言葉に苛まれていた。
 「産んだらかわいいって言われるけど、かわいくなかったらどうするんだろ。もう産む前には戻れないのに」
 まるで目の前に私がいるような感覚に陥る。
 時を経ずして、似たような出来事があった。仕事で会った既婚女性が、子どもがおらず、不妊治療もしていない様子だったので、「産みたくない女性について、どう思いますか?」と思い切って尋ねた。
 彼女は驚いた表情をして言った。
 「私以外にもそういう人、いるんですね。子どもは好きなんですけど、産みたくないと思ってるんですよ。子どもの好き嫌いと産みたいかどうかは別なのに、あまり理解されなくて」
 ああ。やっぱり。
 自分が身を置いた環境に、産みたい人が多かったから私は「変わってる」人だったのだ。産みたくない人はゼロではない。むしろ見えないところにたくさんいるはずだ。