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藤尾慎一郎さん「弥生人はどこから来たのか 最新科学が解明する先史日本」インタビュー 新しい歴史像を描き出す

藤尾慎一郎さん

 昨年出版された一部の日本史教科書は、弥生文化成立の記述に大きな書き換えがあった。米作りの始まりが、従来の紀元前5~4世紀から同8世紀へとさかのぼったのである。

 藤尾さんは放射性炭素年代測定法を用いて当時の土器に付着していたススなどの時代を測り、新しい年代観を打ち立てた研究者の一人で、国立歴史民俗博物館の教授職を今年度で退く。本書では、弥生時代の暦年代のほか、酸素同位体比を使った古気候復元や、縄文人や弥生時代人のDNA分析など、三十数年間の博物館在職中に行ってきた自然科学系の研究者との共同研究の成果が、要領よくまとめられている。

 福岡市生まれ。小学校のころ、市内の百貨店で開かれた、邪馬台国時代のクニの一つ、奴国(なこく)を扱った展覧会を見て考古学にあこがれ、岩陰遺跡などからなる帝釈峡遺跡群(広島県)の発掘調査をしていた広島大学に進学した。卒業論文が九州の弥生時代集落だったこともあり、「実際に九州の遺跡が掘ってみたくて」、九州大学大学院に進学。しかし、考古学研究室の仕事で弥生時代の始まりのころの土器の実測に明け暮れることになり、「結局、それが生涯の研究テーマになった」と笑う。

 本書では、紀元前11世紀に九州北東部や山陰に伝播(でんぱ)したものの、補助的存在だった稲作が、紀元前10世紀後半に玄界灘(げんかいなだ)沿岸に灌漑(かんがい)式水田耕作が伝わったのを機に、紀元前7世紀以降、西日本に一気に広がったという、新しい歴史像が描き出される。

 自然科学の研究成果を中心として先史時代を語ることについては「考古学独自の方法論をもっと重視すべきだ」といった批判もある。「何を優先的に知るのかを考え、異なるジャンルの研究者をとりもって結果を出すのも、考古学者の仕事だと思う。私としては満足しています」(文・宮代栄一 写真・横関一浩)=朝日新聞2024年3月30日掲載