The Sweetest City, Tokyo

Tokyo甘味物語
Special
銀座の名店「和光」が制作「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツ完成!
Vol.8
銀座の名店「和光」が制作
「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツ完成!
銀座の名店「和光」が制作
「Tokyo Tokyo」
オリジナルスイーツ完成!
〈前編〉
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伝統を守りつつ現在まで愛され続ける銘菓から、歴史をふまえながら日々進化を遂げていく最新スイーツまで、東京の「甘いもの」をまるごと紹介するシリーズ企画「Tokyo甘味物語」。その締めくくりとして、銀座の歴史ある名店「和光」全面協力のもと、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツを制作・販売する一大プロジェクトが実現しました! 果たして、どんなスイーツができたのでしょうか。〈前編〉では、試食会から完成に至るまでの模様をお伝えします。
[取材・構成:根津香菜子]

和光

1881(明治14)年に創業した服部時計店の小売部門としてスタートし、1952(昭和27)年より「和光」として本格的に営業を開始。銀座のランドマークとなる4丁目の時計塔のある建物は1932年に建造された。並びのビルにある和光アネックス(2階~地下1階)では、上質な「食」を提供しており、1階では常時20種類のケーキやチョコレートを販売。2階のティーサロンでは、銀座を訪れた多くの観光客がスイーツを楽しんでいる。
[公式サイト]https://www.wako.co.jp/

和光

とある冬の一日。今回のスイーツの開発と製造を担当していただく和光の2人のシェフ パティシエ、小熊亮平(おぐま・りょうへい)さんと松目貴宏(まつめ・たかひろ)さん、食品部をはじめとする和光の皆さん、東京観光財団の方々、そして我々「好書好日」メンバーが集まり、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツの開発に向けた話し合いがもたれました。

「東京らしいお菓子って何だろう?」という素朴な疑問から、「Tokyo Tokyo」のコンセプトでもある「Old meets New」をいかに表現するかといった悩みまで、様々な意見が出るなか、まずは両シェフに考えていただくことに。その数週間後に行われた、1回目の試食会は以下のように進みました。

試食会「焼菓子編」

焼菓子を担当するのは、和光でパティシエを勤めて15年目の松目さん。試食会で用意していただいたのは、きな粉と甘納豆を使った3種類のパウンドケーキでした。

試食会に出された焼菓子
試食会に出された焼菓子

ケーキの生地に入れたきな粉は、日本でお菓子作りが盛んになった江戸時代から庶民にも広く親しまれた食材で「和光でもこれまでに日本の食材を使った洋菓子を何品か作ってきたので、他にどんな食材があるかと考えた時、きな粉を使ってみてはどうかと思いました」と松目さん。

試食を担当するのは、和光オリジナルスイーツの開発とマーケティングを担当する吉丸晶子さんと石井彩芽さん。美味しさはもちろん、お客様の求めるものにいかに近づけられるか「味の吟味役」としてシェフに意見を伝える重要な役割を担っています。

石井彩芽さんと吉丸昌子さん
石井彩芽さん(写真左)と吉丸晶子さん(同右)

真剣な顔で試作品を見つめ、味わう二人からは、ケーキをカットした時の断面や生地に使ったきな粉の量など、次々と質問が飛びます。また、二人共通の意見として「きな粉の風味があまり感じられない」という点があがりました。これを受けた松目シェフは「味を強く出すためにきな粉を多く入れるとどうしてもパサついてしまいます。パウンドケーキ本来のしっとり感を損なわないよう、配合や焼き加減などを微調整しながら色々と試してみようと思います」と、改良への意気込みを語りました。

試食会「生ケーキ編」

一方、生ケーキを担当してくださるのは、和光のシェフ パティシエ・小熊さん。昨年(2019年)パティシエ・コンクールの最高峰である「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に日本代表チームとして参加し、銀メダル(準優勝)を獲得した経歴を持つ小熊さんが考案したのが「未来のショートケーキ」。試作品を出していただくと、鮮やかなピンク色が目を引くケーキが現れ、周りから「デザインが素敵!」という歓声が。

素材は、ミルク、ダーク、ホワイトに次ぐ「第4のチョコレート」として近年話題の「ルビーチョコレート」を使用。鮮やかなピンク色は、天然のカカオからとれる色なのだそうで、クリームにも使われています。

試食会に出された生ケーキ
試食会に出された生ケーキ

石井さんと吉丸さんからは「クリームが甘いので、スポンジ生地とのバランスや酸味などをもう少し考えたほうが良いのでは?」という意見が。「ルビーチョコレート自体、酸味も少しはあるんですけど、ケーキとして使ってみると甘味の方が強く出るんです。他の食材を試して、酸味と甘さのバランスをもう少し改良しようと思います」と小熊さん。

さらに、ケーキの種類も、四角形のものからシュー生地を使ったフランスの伝統菓子「サントノーレ」など3種類を考案してくださいました。味も見た目もそれぞれに良さがあり、甲乙つけがたい出来栄えです! さて、この中からどのデザインが採用されるのでしょうか?

度重なる試作の末、
オリジナルスイーツが完成

両シェフが試食会で出た意見を持ち帰り、試作を重ねて完成したのがこちらの2品! 完成品を前に2人にお話をうかがいました。

小熊亮平さん/松目貴宏さん。
(写真左)シェフ パティシエの小熊亮平さん。「ルビーショート」を手に
(写真右)シェフ パティシエの松目貴宏さん。「ケーク きな粉」を手に
「ルビーショート」
生ケーキ担当:小熊さん

——小熊さんが今回のオリジナルスイーツの土台に「ショートケーキ」を選んだ理由を教えてください。

今回のプロジェクトは「Tokyo Tokyo Old meets New」が大きなテーマとうかがい、「Old」は、約100年前に東京で発祥したショートケーキを基にしようと考えました。「New」の部分は、今流行りの「ルビーチョコレート」を使って「未来のショートケーキ」を表現出来たらと思いました。新しい食材を使って、形も味も、これまでにないショートケーキを作ってみたかったんです。

——ルビーチョコレートに着目したのは、ショコラティエでもある小熊さんならではの発想だなと思ったのですが、小熊さんが思うルビーチョコレートの魅力とはどんなところでしょうか。

やはりこの色ですね。鮮やかなので見た目は映えるのですが、時間がたつと灰色っぽく変色したり、粘度が高くて流動性がなく、扱いが難しいんです。味自体は、ホワイトチョコレートの少し酸味があるような感じです。以前、和光でバニラと木イチゴのムースをルビーチョコレートでコーティングしたクリスマスケーキを販売したことがありますが、ルビーチョコレートをクリームに入れたケーキは今回が初めてですね。

——試作品から改善された点はどんなところですか?

外側をルビーチョコレートで筒状にした分、上に色々なトッピングができるので、イチゴに木イチゴ、ブルーべリーのほか、食感のアクセントにパフや木イチゴのチョコがけなどを乗せました。内側のショートケーキ部分に使用しているルビークリームにも、木イチゴを入れることでより酸味を出しました。スポンジの間にも木イチゴを入れて、クリームとサンドしています。

ルビーショート[800円(税抜き)]
ルビーショート[800円(税抜き)]
「ケーク きな粉」
焼菓子担当:松目さん

——今回、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツを作ってほしい! というオファーを受けた率直なお気持ちを聞かせてください。

食材選びが難しかったですが、今回は大きく「和」の食材でやりたいと思いました。私はお菓子を作るのが好きでこの世界に入ってきたので、今回の試作品を考えるのは楽しかったですよ。

——1回目の試食会からどんなところを改善されたのでしょうか?

まず、上に飾るトッピングにドライイチジクとジュエリーレーズンを使い、赤い粒のシリアルチョコも彩りにあしらいました。ドライイチジクは、今まできな粉との組み合わせでは思いつかなかったのですが、独特の食感と甘みが生地のうまみをさらに引き出しています。また、生地の中には、和菓子では白あんの材料に使われる「手亡豆(てぼうまめ)」の甘納豆を入れました。きな粉の香ばしさや生地とよく合って、一緒に食べた時の一体感が味わえます。

——前回の試食会の時に「もっときな粉の風味がほしい」「生地がパサつかないように」という課題がありましたが、どのように改善されたのですか?

色々な種類のきな粉を試してみた結果、市販ではあまり見かけない国産のきな粉を使うことにしました。ケーキの生地に入れた時に、一番香ばしさを感じられたんです。生地に入れるきな粉の量も、最初に作ったものから3~4倍に増やしましたが、水分量などを計算して、しっとり感も出せたと思います。

——「ケーク きな粉」のおすすめポイントを教えてください。

今年は「東京2020」が開催されることもあり、他県や海外から多くの人が銀座にいらっしゃると思うので、日本に昔からあるきな粉を使った新しいパウンドケーキをたくさんの方に食べていただきたいです。このケーキには洋酒を使ってないので、お子様からご高齢の方まで、幅広い方に美味しく召し上がっていただけると思います。

ケーク きな粉[1本/約18cm 2000円(税抜き)]
ケーク きな粉[1本/約18cm 2000円(税抜き)]

さらに、完成品が出来上がるまで何度も試食を繰り返し、的確なアドバイスを伝え、両シェフと一緒に作り上げてきた和光・食品部の吉丸さんは「『ケーク きな粉』は、試食のたびに『きな粉の風味がもっと欲しい』と伝えていたのですが、納得できる一品ができました。『ルビーショート』も『食べ進める中での面白みがあったらいいな』とだけ小熊シェフに伝えたのですが、こちらも完璧に仕上げてくれました。味はもちろん、材料選びから見た目まで、共にかなり苦心して作ってくれましたので、自信をもって『和光』のお菓子としておすすめできます」。

石井さんは「私たちは常に『銀座4丁目にある店』ということを意識して『年齢も国も様々な方たちに喜んでもらえるものを』ということをコンセプトにしています。今回の新しいお菓子を通して、色々なことを伝えられると思っています」と笑顔を見せました。

昔から日本人になじみのあるきな粉と豆を、洋菓子の定番であるパウンドケーキに取り入れた「ケーク きな粉」と、「未来のTokyo」をイメージした進化系ショートケーキの「ルビーショート」は、今回のコンセプトである「Tokyo Tokyo Old meets New」をそれぞれのシェフが解釈し、具現化したスイーツになっています。ケーキの中身や、気になるお味については〈後編〉でお伝えします。

※後編は3月中旬に公開します。

和光アネックス
ケーキ&チョコレートショップ

[所在地]東京都中央区銀座4-4-8 和光アネックス 1階
[TEL]03-5250-3102
[営業時間/定休日]
10:30~19:30(日・祝日は19:00まで)/無休
[公式サイト]
https://www.wako.co.jp/store_information/main/annex/index.html

和光アネックス
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江戸時代から続く伝統の“和菓子”文化や明治以降に進化を遂げた“洋菓子”文化が根付いたThe Sweetest City 「東京」の魅力を発信するプロジェクトです。朝日新聞社(総合プロデュース室/メディアビジネス局)が「東京の魅力発信プロジェクト(※)」の一環として、様々な企画を展開しています。
※東京の魅力発信プロジェクトとは、東京ブランドアイコン「Tokyo Tokyo Old meets New」を効果的に活用しながら、東京都および東京観光財団が民間事業者と連携し、東京の魅力などを発信する事業です。

【「Tokyo甘味物語」プロジェクト主催】
朝日新聞社 総合プロデュース室(好書好日編集部)
/メディアビジネス局
※本プロジェクトは「東京の魅力発信プロジェクト」に採択されています。
【問合せ先】
book-support@asahi.com