「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツ完成!
「Tokyo Tokyo」
オリジナルスイーツ完成!
伝統を守りつつ現在まで愛され続ける銘菓から、歴史をふまえながら日々進化を遂げていく最新スイーツまで、東京の「甘いもの」をまるごと紹介するシリーズ企画「Tokyo甘味物語」。その締めくくりとして、銀座の歴史ある名店「和光」全面協力のもと、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツを制作・販売する一大プロジェクトが実現しました! 果たして、どんなスイーツができたのでしょうか。〈前編〉では、試食会から完成に至るまでの模様をお伝えします。
[取材・構成:根津香菜子]
1881(明治14)年に創業した服部時計店の小売部門としてスタートし、1952(昭和27)年より「和光」として本格的に営業を開始。銀座のランドマークとなる4丁目の時計塔のある建物は1932年に建造された。並びのビルにある和光アネックス(2階~地下1階)では、上質な「食」を提供しており、1階では常時20種類のケーキやチョコレートを販売。2階のティーサロンでは、銀座を訪れた多くの観光客がスイーツを楽しんでいる。
[公式サイト]https://www.wako.co.jp/
とある冬の一日。今回のスイーツの開発と製造を担当していただく和光の2人のシェフ パティシエ、小熊亮平(おぐま・りょうへい)さんと松目貴宏(まつめ・たかひろ)さん、食品部をはじめとする和光の皆さん、東京観光財団の方々、そして我々「好書好日」メンバーが集まり、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツの開発に向けた話し合いがもたれました。
「東京らしいお菓子って何だろう?」という素朴な疑問から、「Tokyo Tokyo」のコンセプトでもある「Old meets New」をいかに表現するかといった悩みまで、様々な意見が出るなか、まずは両シェフに考えていただくことに。その数週間後に行われた、1回目の試食会は以下のように進みました。
焼菓子を担当するのは、和光でパティシエを勤めて15年目の松目さん。試食会で用意していただいたのは、きな粉と甘納豆を使った3種類のパウンドケーキでした。
一方、生ケーキを担当してくださるのは、和光のシェフ パティシエ・小熊さん。昨年(2019年)パティシエ・コンクールの最高峰である「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に日本代表チームとして参加し、銀メダル(準優勝)を獲得した経歴を持つ小熊さんが考案したのが「未来のショートケーキ」。試作品を出していただくと、鮮やかなピンク色が目を引くケーキが現れ、周りから「デザインが素敵!」という歓声が。
素材は、ミルク、ダーク、ホワイトに次ぐ「第4のチョコレート」として近年話題の「ルビーチョコレート」を使用。鮮やかなピンク色は、天然のカカオからとれる色なのだそうで、クリームにも使われています。
石井さんと吉丸さんからは「クリームが甘いので、スポンジ生地とのバランスや酸味などをもう少し考えたほうが良いのでは?」という意見が。「ルビーチョコレート自体、酸味も少しはあるんですけど、ケーキとして使ってみると甘味の方が強く出るんです。他の食材を試して、酸味と甘さのバランスをもう少し改良しようと思います」と小熊さん。
さらに、ケーキの種類も、四角形のものからシュー生地を使ったフランスの伝統菓子「サントノーレ」など3種類を考案してくださいました。味も見た目もそれぞれに良さがあり、甲乙つけがたい出来栄えです! さて、この中からどのデザインが採用されるのでしょうか?
オリジナルスイーツが完成
両シェフが試食会で出た意見を持ち帰り、試作を重ねて完成したのがこちらの2品! 完成品を前に2人にお話をうかがいました。
生ケーキ担当:小熊さん
——小熊さんが今回のオリジナルスイーツの土台に「ショートケーキ」を選んだ理由を教えてください。
今回のプロジェクトは「Tokyo Tokyo Old meets New」が大きなテーマとうかがい、「Old」は、約100年前に東京で発祥したショートケーキを基にしようと考えました。「New」の部分は、今流行りの「ルビーチョコレート」を使って「未来のショートケーキ」を表現出来たらと思いました。新しい食材を使って、形も味も、これまでにないショートケーキを作ってみたかったんです。
——ルビーチョコレートに着目したのは、ショコラティエでもある小熊さんならではの発想だなと思ったのですが、小熊さんが思うルビーチョコレートの魅力とはどんなところでしょうか。
やはりこの色ですね。鮮やかなので見た目は映えるのですが、時間がたつと灰色っぽく変色したり、粘度が高くて流動性がなく、扱いが難しいんです。味自体は、ホワイトチョコレートの少し酸味があるような感じです。以前、和光でバニラと木イチゴのムースをルビーチョコレートでコーティングしたクリスマスケーキを販売したことがありますが、ルビーチョコレートをクリームに入れたケーキは今回が初めてですね。
——試作品から改善された点はどんなところですか?
外側をルビーチョコレートで筒状にした分、上に色々なトッピングができるので、イチゴに木イチゴ、ブルーべリーのほか、食感のアクセントにパフや木イチゴのチョコがけなどを乗せました。内側のショートケーキ部分に使用しているルビークリームにも、木イチゴを入れることでより酸味を出しました。スポンジの間にも木イチゴを入れて、クリームとサンドしています。
焼菓子担当:松目さん
——今回、「Tokyo Tokyo」オリジナルスイーツを作ってほしい! というオファーを受けた率直なお気持ちを聞かせてください。
食材選びが難しかったですが、今回は大きく「和」の食材でやりたいと思いました。私はお菓子を作るのが好きでこの世界に入ってきたので、今回の試作品を考えるのは楽しかったですよ。
——1回目の試食会からどんなところを改善されたのでしょうか?
まず、上に飾るトッピングにドライイチジクとジュエリーレーズンを使い、赤い粒のシリアルチョコも彩りにあしらいました。ドライイチジクは、今まできな粉との組み合わせでは思いつかなかったのですが、独特の食感と甘みが生地のうまみをさらに引き出しています。また、生地の中には、和菓子では白あんの材料に使われる「手亡豆(てぼうまめ)」の甘納豆を入れました。きな粉の香ばしさや生地とよく合って、一緒に食べた時の一体感が味わえます。
——前回の試食会の時に「もっときな粉の風味がほしい」「生地がパサつかないように」という課題がありましたが、どのように改善されたのですか?
色々な種類のきな粉を試してみた結果、市販ではあまり見かけない国産のきな粉を使うことにしました。ケーキの生地に入れた時に、一番香ばしさを感じられたんです。生地に入れるきな粉の量も、最初に作ったものから3~4倍に増やしましたが、水分量などを計算して、しっとり感も出せたと思います。
——「ケーク きな粉」のおすすめポイントを教えてください。
今年は「東京2020」が開催されることもあり、他県や海外から多くの人が銀座にいらっしゃると思うので、日本に昔からあるきな粉を使った新しいパウンドケーキをたくさんの方に食べていただきたいです。このケーキには洋酒を使ってないので、お子様からご高齢の方まで、幅広い方に美味しく召し上がっていただけると思います。
「ケーク きな粉」「ルビーショート」に加え、シュー生地を用いたフランスの伝統的な「サントノーレ」を元に、「ルビーショート」と同じクリームを使って進化させた「サントノーレ ルビー」(750円、税抜き)を、2月15日(土)から和光アネックス1階 ケーキ&チョコレートショップで販売します。東京の新たな名物になりそうなスイーツを、この機会にお試しください。
ケーキ&チョコレートショップ
[所在地]東京都中央区銀座4-4-8 和光アネックス 1階
[TEL]03-5250-3102
[営業時間/定休日]
10:30~19:30(日・祝日は19:00まで)/無休
[公式サイト]
https://www.wako.co.jp/store_information/main/annex/index.html