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小山健「生理ちゃん」 月イチでやってくるやっかいな彼女

『生理ちゃん』 [著]小山健

 それは、ほぼ月イチのペースでやってくる。宅配便やガスの検針の話ではない。生理の話だ。いわゆる月のものを“生理ちゃん”としてキャラクター化した本作は、さまざまな立場の女性と彼女(!?)との掛け合いを読み切り形式でみせていく。
 大きな注射器で血液を奪い、生理痛を起こすべく腹部に強烈なパンチをお見舞い。締めきりに追われるライターのもとにも容赦なくやってきて、眠気を誘う。自分の身体で毎月起きていることなのにコントロールが利かず、語るも難しいやっかいな現象。しかし、可視化されることで客観的に捉えなおすことができ、愛(いと)しささえ湧いてくる。
 さらに生理ちゃんは、個人差の激しい生理痛の軽重や異性間の認識の違いからくる潜在的な偏見をも炙(あぶ)りだす。それらの問題は、SNS等で次々に掘り起こされ、目を向けるべきとされる今日的な諸問題とも無縁ではない。しかし、柔らかな線で描かれたキモかわいい生理ちゃんの存在が、事の深刻度をいい具合に調和してくれるため、読み味はピースフル。最終話の生理用ナプキンの開発者をモデルにしたフィクション「おばあちゃんと生理ちゃん」にはホロリとさせられた。=朝日新聞2018年6月23日掲載