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高橋源一郎「お釈迦さま以外はみんなバカ」書評 モノの見方変わる読み解きの魔法

お釈迦さま以外はみんなバカ 高橋源一郎

 作家・高橋源一郎は、優れた文芸批評家でもある。忘れられた名作小説や難解な現代詩、ゲームにマンガと様々なものを鋭く平易な言葉で読み解く。さほど興味のなかった題材でも見え方が変わる魔法がある。
 『お釈迦さま以外はみんなバカ』(インターナショナル新書・799円)は、本やウェブサイトから気になる言葉や文章を紹介する本。キラキラネームのリストなら、こう読む。「外国製の可愛いものを漢字で読めるようにする。それは、外見は日本人であるまま、外国人になりたいという、日本人の奥底にある願望の表れではないだろうか」。村上春樹の「中くらいの稲妻に打たれたみたいに」という表現を引き、文学では陳腐と思われていた比喩、しかもわかりやすい代表の一つである「稲妻」に「『中くらい』とつけるだけで、まったく意味を変えてしまった」と驚いてみせる。
 高橋の読みを楽しめる入門書的な一冊。その分、魔力はやや控えめかもしれない。より強い刺激を求めて、他の著作にも手が伸びるのだった。(滝沢文那)=朝日新聞2018年7月28日掲載