昔となった「こないだ」、ともに過ごした師友のことなどを書いた、1930年生まれの作家・山田稔さんの最新文集が『こないだ』(編集工房ノア・2160円)。
少年のころから、従兄(いとこ)や姉と手紙のやりとりをした。書く習慣ができ、志賀直哉を読み、「小説とも随筆ともつかぬ散文」が好きになった。そういう著者が、懐かしい人や、読んだ本について書きながら、おのずと関心が向かうのは「文章」だ。
エイズ患者とボランティアのかかわりを描いたレベッカ・ブラウン『体の贈り物』(柴田元幸訳)にはすがすがしさを感じたという。各編の「冒頭の文の簡潔さ、身軽さ、動きのよさのリズムに乗るようにして『私』は病人たちの部屋に入って行く」。
「言ってしまえばごく普通の文章で、そこがいい」と、評した本もある。
哲学者の鶴見俊輔さんに本を送ると、肩の力がぬけているなどと、必ず褒める礼状が届いた。「ピッチャーが速球をほうって、ストライク!という感じがない」と書かれていた時には思わず笑ったという。(石田祐樹)=朝日新聞2018年8月4日掲載
編集部一押し!
- ひもとく 昭和100年/戦後80年 自らを問い、歴史と対話を 保阪正康 保阪正康
-
- 朝宮運河のホラーワールド渉猟 空前のモキュメンタリーブームに沸いた一年 2024年ホラーワールド回顧 朝宮運河
-
- インタビュー ヨッピーさん「育児ハック」インタビュー 「子どもが社会的“野生味”を身につけてくれれば」 川崎絵美
- インタビュー 松下洸平さん「フキサチーフ」インタビュー 僕の言葉を探してつむぐ、率直な今の思い 根津香菜子
- 今、注目の絵本! 「絵本ナビプラチナブック」 絵本ナビ編集長おすすめの新刊絵本11冊は…? 「NEXTプラチナブック」(2024年11月選定) 磯崎園子
- 鴻巣友季子の文学潮流 鴻巣友季子の文学潮流(第21回) 英語圏で続く日本語文学ブーム、若い世代が支持 鴻巣友季子
- イベント 「今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて」公開収録に、「ツミデミック」一穂ミチさんが登場! 現代小説×歴史小説 2人の直木賞作家が見たパンデミックとは PR by 光文社
- インタビュー 寺地はるなさん「雫」インタビュー 中学の同級生4人の30年間を書いて見つけた「大人って自由」 PR by NHK出版
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社