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「朝、目覚めると、戦争が始まっていました」 真珠湾攻撃に高揚した知識人

  さきの大戦を振り返るとき、終戦記念日から見るのか、開戦した日から見るかでは、おのずと戦争の景色は異なるのではないか。「マスメディアはどうして終戦記念日ばかり騒ぐのか」と、かつて問われたこともずっとひっかかってはいた。
 『朝、目覚めると、戦争が始まっていました』(方丈社・1296円)は、似たような思いから方丈社編集部がまとめた。日本時間1941年12月8日、日本軍が真珠湾を攻撃し太平洋戦争が始まったことを伝えるラジオニュースを、当時の人はどう受け止めたのか。知識人や作家ら55人の回想録などから抜粋し集めた。
 「一歩たりとも、敵をわが国土に入れてはならぬ」(坂口安吾35歳)。「みんな万歳を叫んだ」(井伏鱒二43歳)。解放感に満ちた勇ましい記述が多い。「僕達が努力しなかったのが悪かった」(ジャーナリスト・清沢洌51歳)というのは少数だ。
 将来、本書のタイトルのようなことは言いたくない。他人まかせでぼおっと過ごしていてはいけないのである。(久田貴志子)=朝日新聞2018年9月29日掲載