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逸材結集、フリマアプリ企業の群像劇 奥平和行「メルカリ」

『メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間』 [著]奥平和行

 スマホを使って個人が物品を売買するフリマアプリ市場は5千億円近い規模に成長。後発のメルカリがなぜ、約6割のシェアを占めるほどの強さを持つに至ったのか。共同創業者の一人で会長兼CEOの山田進太郎のもとに参集した面々の群像劇を経済紙記者が描き、その疑問に迫る。
 山田は最初に起業した会社を米国企業に売却。しかし、親会社となった米国側と意見が合わず、失意のまま退社するところから物語は始まる。
 世界一周旅行の後、再起を期し、フリマアプリ事業の起業を決意。2人の共同創業者をはじめ、ネット業界の各分野で活躍する男女が磁石に吸い寄せられるように集まる。
 このプロ人材の優れた知恵を結集。投資先を求める豊富な資金の力も得て、先行した競合相手を圧倒していった。
 印象的なのは、斯界(しかい)で名を馳(は)せた起業経験者、フェイスブックのバイスプレジデントなどの逸材が馳せ参じたことだ。吸引力の源泉は「世界で使われるインターネットサービスを創る」という山田の一貫した思いだろう。
 創業から1年弱で、米国に進出。「日本の起業は小粒」という冷めた見方を、この希有(けう)な梁山泊集団は打破してくれそうな期待を抱かせる。=朝日新聞2018年12月15日掲載