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史上初のバックギャモンマンガが登場! くさか里樹「レオの柩」(第97回)

 前回は将棋マンガを取り上げたが、考えてみれば将棋と麻雀以外のボードゲームをテーマにしたマンガは少ない。画期的だったのは1999年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で始まった『ヒカルの碁』(ほったゆみ・小畑健)だろう。主人公の少年・進藤ヒカルは平安時代の天才棋士・藤原佐為(さい)の霊と出会って囲碁を始め、院生を経てプロになっていく。ほとんどの少年がルールも知らない「囲碁」をメジャーな少年誌で取り上げたことに驚かされたが、これが大ヒット。全国の少年たちに囲碁ブームを巻き起こす。

 個人的にはそれ以来の驚きといっていい。今年3月、介護マンガ『ヘルプマン!!』で知られるくさか里樹によって、アプリ「マンガZERO」のオリジナルレーベル「ジヘン」で“史上初のバックギャモンマンガ”となる『レオの柩(ひつぎ)』がスタート! 10月に第1巻も発売された(電子書籍のみ)。
 バックギャモンは日本でこそマイナーだが、実に5000年の歴史を持ち、欧米ではどメジャーなボードゲームだ。チェス、トランプ、ドミノとともに「世界四大ゲーム」のひとつにも数えられている。対戦形式は将棋や囲碁と同じく1対1。お互い15個のコマを持ち、2個のサイコロを振ってゴールに進めていく。通常の「すごろく」と大きく違うのは、お互いが逆方向に進み、敵のコマを弾き飛ばせること。サイコロを使うものの、より重要なのはテクニックであり、トッププレーヤーはサイコロの目によらず常に強い。運とテクニックの両方が必要という意味では麻雀に近いかもしれない。
 日本には飛鳥時代に伝わり、「盤双六」と呼ばれた。ちなみに平安時代を舞台にした『陰陽師』(岡野玲子・夢枕獏)にも盤双六をする場面がしっかり描かれている。世界選手権では日本人も何度か優勝しており、2018年は矢澤亜希子が2回目の優勝をはたした。彼女をはじめ、賞金で生活しているプロの日本人プレーヤーも存在するのだ。

 物語は羽田空港から始まる。世界的なバックギャモンプレーヤーの速水翠(みどり)は、アメリカ人の富豪と「32万ドル(2018年12月現在は約3500万円)の賭けギャモン」をする少女・三浦レオと出会う。児童養護施設で性的虐待を受けて育ったレオは、危険をかえりみないニヒリズムと並外れた暗算能力を持っていた。圧倒的な劣勢に立ってから大逆転を狙うシャハブ・プライムを使い、見事に32万ドルの小切手を手にするが――。
 レオはいかにも育ちが悪く、「ちばてつやが描いた高度成長期の不良少年」のようなキャラクター。きちんとルールを知っているのにシャハブ・プライムが「危険極まりない戦法」であることがわからないなど、矛盾を感じる部分もあるのだが、細かいツッコミはやめておこう。多くの人にバックギャモンの面白さを伝えるため、がんばってもらいたい!

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