取材のためシリアに入国し、武装組織の人質となったフリージャーナリストの安田純平さんが解放されたのは3カ月前。『シリア拘束 安田純平の40か月』(扶桑社・864円)は、帰国後2度の本人会見の全文とインタビュー、本人によるキーワード解説などをまとめたブックレットである。
恥ずかしながら本書でやっと彼の身に起こった全体像が分かった。拘束は「私の凡ミス」と率直に謝罪し、延べ6時間を費やし、安田さんは懸命に言葉を紡いでいる。
妻宛ての暗号文で「身代金は払うな」と伝え、拘束が3年に及ぶと、自ら「殺せ」と訴えた。身動きが許されない状況で、組織の正体や監禁場所、なぜ拘束を続けるのかをわずかな情報から分析し、イスラムの教義を盾に解放要求するなどサスペンスばりの頭脳戦を仕掛けたことも。
浮かび上がるのは、誠実さと優れた状況把握能力を持つジャーナリストの姿だ。自己責任のバッシングによって、かすんでしまったその経験から、何かを学ぶべき時期が来ているのでは。(木村尚貴)=朝日新聞2019年1月12日掲載
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