最近はゆるキャラの名付け親として語られることも多いみうらじゅん。だが、ヒットの陰にはみうらだけが執着してきた様々なモノが渦巻いている。『マイ遺品セレクション』(文芸春秋・1404円)は、そんな“癖(へき)”の数々をコンパクトにまとめた一冊。
「世はやれ断捨離だとか終活だとか、ものを少しでも無くしていく風潮にあるが、長年に渡りつけてしまった癖はそう易々(やすやす)と直らない」。町中の看板から般若心経にある漢字を集めて構成した「アウトドア般若心経」やカニの写真が載った旅行パンフレット「カニパン」、極端に本数の少ないバスの時刻表「地獄表」など、本人も「なぁーんの価値もない」と認めるものばかり。
でも、「そこがいいんじゃない!」(ファンにはおなじみのフレーズ)。効率や生産性とはまるで逆の精神性だ。小学校の絵日記から10代で書いた詩、親孝行まで、寺山修司ばりに自分を見せ物にしてきたが、いよいよ「遺品」で来たか、と思う。もちろん、長生きしてまだまだニヤニヤさせてほしいのですが。(滝沢文那)=朝日新聞2019年3月2日掲載
編集部一押し!
- インタビュー 「尾上右近 華麗なる花道」インタビュー カレーと歌舞伎、懐が深いところが似ている 中村さやか
-
- 中江有里の「開け!本の扉。ときどき野球も」 生きるために、変化を恐れない。迷いが消えた福岡伸一「生物と無生物のあいだ」 中江有里の「開け!野球の扉」 #13 中江有里
-
- コラム 三浦しをんさんエッセー集「しんがりで寝ています」 可笑しくも愛しい「日常」伝える 好書好日編集部
- 働きざかりの君たちへ 乃木坂46から心理カウンセラーに 中元日芽香さん「自分自身が後悔ない選択を」 五月女菜穂
- 小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。 【特別版】芥川賞・九段理江さん「芥川賞を獲るコツ、わかりました」 小説家になりたい人が、芥川賞作家になった人に聞いてみた。 清繭子
- 韓国文学 ソルレダ「わたしの中の黒い感情」 ネガティブな感情から自分を解き放つ案内書 好書好日編集部
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社