本書によれば、競技としてのバトントワリングの世界大会は、日本選手が表彰台独占状態らしい。調べてみたら本当にそうで、マジカルな演技動画に目を奪われた。
そのバトン競技に4歳から大学まで打ち込みながら、今はしがないアラサーOL。仕事もプライベートもパッとせず、安酒あおってネット徘徊(はいかい)で一日が終わる。唯一のストレス解消は、サウナで女子大生の恋愛相談に乗ること。
そんな生煮えの日々を送る主人公が、ひょんなことから世界一をめざす高校生男子をコーチすることになる。普通のスポーツなら無理筋に感じる設定だが、バトンの場合は大丈夫。男子はジュニア部門で金メダル、主人公も本気で世界一をめざしていた人間とくれば現実味は十分だ。
バトン以外はいろいろ残念な主人公、俺様男子、なぜかオネエ言葉の現世界王者など濃いキャラたちがギャグとシリアスを演じ分ける。作者自身バトン経験者とのことで、演技シーンのキレもいい。
主人公がバトンを手にすると水を得た魚になるのと同様に、好きなものを描く喜びが画面からこぼれる。〈熱中することがあれば人は孤独を感じない〉とは至言。「本気」の熱にあおられる。=朝日新聞2019年3月9日掲載
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