1. HOME
  2. コラム
  3. ビジネス書セレクト
  4. 「Deep Tech ディープテック 眠れる技術」 模倣困難なテクノロジーで課題を解決

「Deep Tech ディープテック 眠れる技術」 模倣困難なテクノロジーで課題を解決

 ディープテックとは、根深い課題(ディープイシュー)をテクノロジーで解決する活動を指す。経済成長の陰で社会課題が噴出する東南アジアで、ベンチャーによる活動を支援してきた起業家とIT評論家による現地での多様なプロジェクトの見聞録だ。

 著者らが注目するのは、既に成熟した国では光を浴びない日本企業の「枯れた技術」「眠れる技術」が役立つ場面が少なくないことだ。

 例えば、降水が道路にあふれるインドネシアで、石炭燃料の廃棄物から浸透性の高いブロックを開発する際、強度の問題が日本の化学系企業の薬品により打開された。シンガポールでは大気汚染を特殊な液体で解決するプロジェクトで、日本のメーカーの高性能ポンプが救世主となった。

 ディープテックへの過去4年の民間投資総額は約2兆円。今後も市場が広がる。デジタル化で後れをとった日本企業にとって「新しいビジネスチャンス」になると指摘。

 足を運ぶべきはシリコンバレーではなく、「ディープイシューの宝庫、東南アジア」との言葉が印象的だ。イノベーションには模倣困難なアナログ技術も必要だ。ディープテックでの日本のアナログ技術の再評価が期待される。=朝日新聞2019年10月19日掲載