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うめ「東京トイボクシーズ」 真剣に挑むゲーム、スポ根の快感も

 4月に施行された香川県のゲーム規制条例が物議を醸した。依存症についての科学的根拠やパブコメ問題は別にしても、同条例の根底にはゲーム=お遊びという価値観が根強くある。しかし、今や世界には億単位の年収を稼ぐプロゲーマーがいる時代なのだ。

 本作の主人公・安曇野蓮(れん)も15歳にして海外のプロチームで活動するゲーマーである。事情により一人で暮らす蓮にとって、ゲームは金を稼ぐ=生きるための武器。そんな蓮が名門中高一貫校に新設された日本初のeスポーツ科に特待生としてスカウトされる。

 学校でゲームを学ぶ、それも制作ではなくプレーを学ぶことに世間の目は厳しい。入学式では本科の生徒や保護者からも冷笑的な視線や言葉を浴びせられる。そこでeスポーツ科代表として登壇した蓮が放った啖呵(たんか)が痛快だ。

 作中のゲームは、知識、戦略、反射神経、反復練習を要する点で確かにスポーツに近い。親に抑圧された同級生が蓮に感化され“特訓”で急成長する場面は、それこそスポ根的快感を伴う。何かに真剣に取り組む時間の価値は勉強もスポーツもゲームも音楽もマンガも同じ。大人たちの思惑も絡む物語は教育問題まで射程に捉えて白熱する。=朝日新聞2020年7月4日掲載