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「大東京トイボックス」で知る、ゲームクリエイター チームワークが面白いものを生み出す!

文:佐藤直子

 外出自粛の終わりが見えず、この機会にゲームを始めた方も多いのでは? 特にスマホで気軽にプレイできるゲームアプリは、ゲーマーと呼ばれる一部のゲーム好きだけでなく、一般的にも広がってきました。今回はその裏側をハードに描く『大東京トイボックス』(小沢高広・妹尾朝子/うめ)を紹介します。

 「ゲーム屋」を目指す人の多くは、感動したゲームに出会ったことがあるのだとか。主人公の百田モモもその一人。中学時代からゲームを攻略するため、分析に時間を費やし、ゲームセンターでのバイト経験もある筋金入りのゲーマーで、夢と希望を胸に企画見習いとしてスマホゲーム業界に飛び込みます。開発中のゲームの不具合のチェック、動作確認をするなどの仕事にも喜びを感じ、ついに念願の企画を任されることになるのです。

『大東京トイボックス』(小沢高広・妹尾朝子/うめ)より

 企画職とは、新作ゲームを企画し、ストーリーに沿ったキャラクターの設定、ルール、システムなどを考え、「こういうゲームを作りたい」と提案するのが仕事。企画が通ればゲーム制作の設計図である仕様書を作成して完成イメージをスタッフに共有し、プログラマーやデザイナーなど各パートの進捗具合などを確認しながら、適切な指示を出します。

 しかし、当たり障りのない企画しか考えられないモモに、先輩の天川太陽から「自分が面白いと思うか」という喝が入ります。納得いく企画が書けない、その苦しさから一時会社を休んでしまったモモですが、それでもゲームから離れることができません。そして、あるきっかけによりモモは138個の企画を携えて再スタートを切るのです。

 モモが師匠と呼ぶ太陽は、ゲーム全体の方針を決める現場監督としてスタッフに指示を出すディレクターで、ヒット作をいくつも世に出しています。体を壊した時にも、頭にあるのはゲームのことばかり。「誰も見たことがないゲームを作りたい」と常にストイックに情熱を燃やしています。次世代機でのゲーム開発では、最高の面白さを求めるあまり、何度も現場に修正を依頼し混乱させてしまったことも。ゲーム制作は、プログラマーやグラフィックデザイナーなど専門的な技術を持つスタッフが分業するため、イメージの共有ができないまま進んでしまうと温度差が生まれてしまい、プロジェクトの遅延を招くことになりかねません。また、いくら優れたアイデアでもコストの関係で形にならないこともあり、もどかしさを感じることもしばしば。どこまでチャレンジするかを見極める駆け引きも必要です。

『大東京トイボックス』(小沢高広・妹尾朝子/うめ)より

 時に衝突したり、嫌なムードになってしまうチームの空気を変えるのがモモです。常に自信に満ちている太陽が弱気になった時にも背中を押します。採用されたのはまだ1つと、ゲームの企画力は未熟ですが、持ち前の明るさと鋭い洞察力でチームのムードメーカーになっていきます。太陽と他のスタッフとの隔たりを縮めるため一人ひとりと話したり、無理をしている仲間の変化にいち早く気づいたりすることは、挫折を経験したモモだからできること。

 限られた期間や予算の中でいかに面白いゲームが作れるかは、それぞれがそれぞれの役割を果たすチームワークが左右するのかもしれません。モモや太陽たちは今日も、仲間ともに悩みながらゲームを作っています。

「大東京トイボックス」で知る、ゲームクリエイターあるある!?

  • プランナーの発想力は豊か。例えば「『ち』がつく丸いものを思い浮かべる」という課題には、「血豆」や「ちびまるこちゃん」など斜め上をいく回答が多く、感性の高さがうかがえる
  • ゲームの世界観を表現するために、登場するキャラクターのコスプレをして、プレゼンに臨むことがある
  • 机の周りはお気に入りのフィギュアなどでそれぞれ独特の世界観を作っている
  • 作業に集中するため、段ボールをかぶって仕事をする人がいる
  • 多忙な時には、家に帰れず3日パンツを変えず仕事に取り組む人がいる

ゲームに携わる人々

 ゲーム作品制作に携わる人を「ゲームクリエイター」と呼びます。予算やスケジュール、人員を管理するプロデューサーや、太陽のように現場を指揮するディレクター、モモのように新作ゲームを考えるプランナーなどがいます。グラフィックデザイナー、プログラマー、シナリオライター、サウンドクリエイターなどとの共同作業で、一つの作品を作っています。