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「服なんて、どうでもいいと思ってた。」で知る、ファッション誌編集者のお仕事 流行生み出すチャンスは誰にでも

文:片岡まえ

 コロナ禍でステイホームが続く中、インスタグラムでは「おうちファッション」が競うように投稿され、雑誌ではPC画面に映る上半身の「リモートワークファッション」特集が組まれるなど、ファッション界にも変化が出てきました。一方で、ノーメイクに部屋着の頻度が増え、油断して外出した時に限って知人に出くわして気まずい思いをしたという方も多いのでは? たかが服、されど服。服を取り巻くトレンド作りに命を燃やす人たちを取り上げるのがコメディ漫画『服なんて、どうでもいいと思ってた。』(青木U平、KADOKAWA)です。

 本作の中心人物は、盆栽やボクシング、映画雑誌から20代おしゃれ女子のファッションバイブル「ルイルイ」の編集担当になった、冴えない男性たち。ファッションとは縁のない彼らが、女性だらけの職場で試行錯誤や失敗を重ねながら、ファッションという未知の世界に挑みます。

©Yuhei Aoki 2015(発行:KADOKAWA)

 その中の一人、盆栽雑誌から来た花月カヲルは高校時代、デート相手に私服のセンスを幻滅された経験からファッションに強いコンプレックスを持っています。当然、撮影現場でモデルが持つ小道具ひとつ決められず、おしゃれに敏感なガールズトークにも圧倒されてしまいます。

 雑誌の柱であるコーディネートの提案も、花月らが考えるのは自分好みのエッチなコスプレだったり、ボクシングにちなんだものだったりと的外れなものばかり。コーディネートを紹介するキャッチコピーや原稿にも、頭を悩ませます。女性は肌感覚で使いこなしていこなしている「彼ガール」(=彼氏の洋服を借りてつくる男の子っぽさのあるスタイル)や「ヌケ感」(=きっちりとしたファッションを引き算してあえてラフさを出すこと)など特有のファッション用語は、新しいワードが日々誕生し、進化し続けているからです。

 ファッションショーなどでは人気雑誌の編集者としてのふるまいや見解を求められることも多く、彼らも弱気になってばかりいられません。アパレルブランドの宣伝担当のプレスと親しくなり、広告を取りやすくすることも大事な仕事。流行りやトレンドを熟知し、さらに新しいファッションスタイルを提案することも求められているのです。

©Yuhei Aoki 2015(発行:KADOKAWA)

 常に壁にぶち当たる花月らをサポートするのは、恋愛に精通したデスクの斑鳩九一郎。男女の価値観の違いなど恋愛の観点から、撮影現場でわがまま放題のモデルをなだめ、社内の女性の本音を引き出すなどコミュニケーションを良好にし、チームを引っ張ります。

 「ルイルイ」は女性の心理や特性が詰まった文化そのものであり、関心の中心はファッションと恋愛。ファッションは時に理解に苦しむようなデザインもありますが、言い換えれば何が人の気持ちをとらえるかわからないという面白さがあるということ。流行を生み出すチャンスは、花月らにもあります。タイトル通り「服なんて、どうでもいいと思ってた」彼らの成長と、そこから生まれるトレンドが楽しみです。

「服なんて、どうでもいいと思ってた。」で知る、ファッション誌編集部あるある!?

  • 今年のトレンドになるカラーの発表は作業の手を止めるほどの重要事項
  • 白髪のおしゃれな言いまわしを考えてほしいなど、企業から依頼されることもある
  • 雑誌によってそれぞれのカラーがあり、編集部によって雰囲気が全然違う
  • 企業からの読者プレゼントの分配で異なる雑誌同士で揉めることがある
  • 女性誌の企画でよく見る合コン特集などは、編集部員同士で模擬合コンを行ったり、実際に本当の合コンに出かけたりして、その実情を伝えている