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雑誌「ROCK&SNOW」 ボルダリングが呼んでいる

「ROCK&SNOW」表紙

 この夏のオリンピックで、今まではあまり見たことがなかった競技の面白さに魅せられた。マウンテンバイクやスケートボード、サーフィンなどなど。なかでもスポーツクライミングの一種目ボルダリングに釘付けだった。壁を登りながらジャンプして次のホールドをつかむなど、とても人間業とは思えなかったのである。

 で、思わず雑誌「ROCK&SNOW」を買ってきた。山と渓谷社が出している季刊誌で、かつて「岩と雪」というタイトルだったのがリニューアルされたようだ。どのページを開いても、誰かが岩をガシガシ登っている。

 ロッククライミングは自分も多少経験があり、関東近郊の岩壁を登りに行ったりしたけれど、ボルダリングは高さ5メートルぐらいまでの、仮に落っこちても大丈夫な程度(マットなどは敷くが)の岩をロープなしで登るスポーツである。そのため、川沿いや道路脇など身近な場所にもスポットがあるし、小さい岩なのにプロでも登るのが難しいなど難易度も千差万別。ロッククライミングのなかでももっとも手軽に始められる点が魅力だ。

 「ROCK&SNOW」にはいろんな岩の写真やルート図が載っていた。人間、岩ひとつあればこんなにも遊べるということにワクワクさせられる。

 図をよく見ると、登るルートごとに妙な名前がついているのが面白い。「昼寝の歌」「宇宙遊泳」「お疲れ」「ツムツム」「遠い猿撃つうるさい音」などなど、どれも思いつきでつけたような適当さだけど、そこにかえって愛を感じたのである。

 冒頭にはオリンピックの記事があり、あのときの興奮を思い出した。

 そういえばテレビを見ながら、あの「課題」と呼ばれる各ルートはいったい誰が作っているのか気になっていた。ルートセッターという仕事があるようだ。そんなセッターの連載記事もあり、読み込んでしまった。みんなが登れたら差がつかないし、誰も登れないんじゃつまらない。ギリギリの課題作りがとても難しそうだ。

 モチベーションについて書かれた連載「クライミングラボ」も可笑(おか)しい。クライミング好きな女性たちの、好きな岩にいつでも行けるよう運転免許をとって近くに引っ越した話だの、仕事が終わってから夜中に400キロの道のりを車で飛ばし未明から冬山に登って夜遅く帰って翌朝出社だの、好きなことに全力を傾けている人の話はこっちも元気になる。

 岩登りはもう卒業したが、ボルダリングが私を呼んでいる気がする。=朝日新聞2021年10月6日掲載