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落合陽一「超AI時代の生存戦略」書評 想像し難い未来にどう働くか

超AI時代の生存戦略―シンギュラリティに備える34のリスト [著]落合陽一

 AI、ディープラーニングをはじめ、この本にはロボティクス、マテリアルプレゼンスといった、先端のテクノロジー用語がちりばめられ、読み始めから、くらくらになる。そもそも副題の「シンギュラリティ」からして分からない。
 「技術的特異点」と訳されるシンギュラリティは、2040年代に、コンピュータ技術が極みに達し、AIが人間に代わって世界を進化させていく分岐点——と一般に説明される。その想像し難い未来に、人はどんな働き方をすればいいのか。「信仰心」「趣味性」など独特のキーワードを用いながら、気鋭の研究者が提示するのは、「ワークライフバランス」を超越した「ワーク“アズ”ライフ」、つまり働く=生きる、という概念だ。
 「あなたが中間の調整作業をやっている自覚があるのであれば、それはそのうちコンピュータにやられてしまいやすいところ」であり、だったら「ライフにおいても戦略を定め、差別化した人生価値を用いて利潤を集めていく」ことが最重要になる。要は「もっと遊んだほうがいい」。
 「現代の魔法使い」と称される著者の託宣は、ややぎこちない印象を与えるところが進化中のAIを想起させ、妙に納得してしまった。=朝日新聞2017年4月16日掲載