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「SPRINT 最速仕事術」 非民主主義的でアナログな“短距離走”

SPRINT 最速仕事術―あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法 [著]ジェイク・ナップほか

 製品・サービスを最速で開発するため、プロトタイプ(試作品)の立案から製作、テストまでを月曜〜金曜の5日間で行う。名づけてSPRINT(スプリント)(短距離走)。グーグル系ベンチャーキャピタルのスタッフの著者が発案。投資先に導入し成果をあげてきた。
 チームは7人以下。多様な人材を集め缶詰めに。携帯電話持ち込み禁止。進め方は非民主主義的でアナログだ。
 集団合議は効果なしと排除。一定時間内での個別の集中的な思考を重視する。それを付箋(ふせん)に書き、ホワイトボードに貼って見える化し共有。各自の意思はアイデア候補に丸いシールを貼る投票で示すが、投票結果にかかわらず、最後は「決定者」が決める。
 ロシア民謡「一週間」のように曜日別に手順を紹介。事例豊富。おまけにジョークも満載。楽しく学べる指南書だ。
 この方法はソフトウェア業界でチームを部門横断で組み、短期で開発するスクラムという手法に類似している。最小限の時間で最大限の成果を目指すと、行き着く先は同じということだろう。実はスクラムは1980年代の日本企業が強かったころの製品開発手法にルーツを持つ。ただ、それをシステム化するところが、いかにもアメリカ的だ。=朝日新聞2017年5月21日掲載