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生態知ると小説家って面白い

かとう・ちえ 1983年生まれ。歌集『ハッピーアイスクリーム』でデビュー。小説は『春へつづく』など多数<嶋田達也撮影>

 お笑いコンビ「オードリー」の一人で、読書好きの芸人として知られる若林正恭さんが司会を務め、小説家たちとトークする文筆系バラエティー番組が『ご本、出しときますね?』として書籍化されたのを機に、東京・渋谷のHMV&BOOKS TOKYOで公開トークイベントが開かれた。ゲストは番組にも出演した小説家の中村航さんと加藤千恵さん、司会は番組プロデューサーの佐久間宣行さん(テレビ東京)。会場は終始笑いに包まれた。

自分に合う本、見つかるかも

 「ご本、出しときますね?」は毎回2人の小説家が、マイルールを話したり、質問し合ったりするトーク番組。昨年4〜6月にかけてBSジャパンで放映された。小説を「偏愛」し、プライベートでも小説家たちと交流のある若林さんが司会を務めた。
 番組は「小説家さんとのトーク番組、やれますかね?」と若林さんが佐久間さんにもちかけた。プライベートな場での「会話のカオスっぷりと面白さは、独り占めするにはあまりにもったいなかった」「人としての『小説家』の面白さは、その人が書く作品とはまた別次元のもの」「(本を読むときに)作品じゃなくて、その書き手である『小説家』から入るのだってアリ」と本書の「はじめに」に若林さんが書くように、トークから小説家たちの考え方やスタイル、生態が見えてくる。
 番組での、本にして書店で展開したい、イベントをしたいという若林さんの発言を受けての書籍化で、今回はいつも一緒に飲んでいる4人が登壇した。

なかむら・こう 1969年生まれ。02年『リレキショ』で文藝賞。『100回泣くこと』はベストセラーに<嶋田達也撮影>
なかむら・こう 1969年生まれ。02年『リレキショ』で文藝賞。『100回泣くこと』はベストセラーに<嶋田達也撮影>

 イベントでは、本の中で気になった質問や回答、マイルールをそれぞれ挙げてもらった。
 加藤さんは「一曲だけ聴きたくてレンタルで借りてきたCDの興味のない残りの曲もiTunesに入れる」という長嶋有さんのルールに反省したという。「本棚やCD棚を見て、その人をちょっとわかったような気になる。でも、普通に生きていたら、ノイズのない人間はいないというようなことを長嶋さんがおっしゃって、ああその通りだなあと」
 「嫉妬する作家はいますか?」という質問に、「嫉妬しかしてない」と答えた朝井リョウさんに中村さんは感心する。「すごく嫉妬していて、しかも隠していない、すごいなあ」。中村さんは加藤さんのルール「『才能がある』を褒め言葉にしない」も気になった。才能は本人の努力によるものではないからという加藤さんに、「才能が大好きであこがれがあって、褒めたいんです。(褒めるのは)結果に対してだから」という。

わかばやし・まさやす 1978年生まれ。著書に『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』がある<嶋田達也撮影>
わかばやし・まさやす 1978年生まれ。著書に『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』がある<嶋田達也撮影>

 「恋愛に傾向はありますか?」と聞かれ、「『女の子に面倒を見られたい』という願望がある」と答えた若林さん。5年に1人くらい面倒見てくれる女性が現れるが、5カ月くらいすると、なめんなよ、と思う。マンゴーを食べやすく切って家の冷蔵庫に冷やしてあって、むかついた。「俺に喜びを与えることを生きがいにしてんじゃねーっ」。小説家だけでなく、若林さんも剥(む)かれていく。
 若林さんは小説家のインタビュー記事を読みその人の考え方を知って、本を読む。小説に至るルートはそれしかない。「お薦めの本を聞かれると、めっちゃ腹立つんです。おまえの性格を知らねえよって」。だから、この本を読めば自分に合う本が見つかるのではという。小説家になるにはどうしたらいいかとよく聞かれる加藤さん。「傾向ではないけど、なにかわかるんじゃないかな」 (岡恵里)=朝日新聞2017年5月28日掲載