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行こう、どこにもなかった方法で [著]寺尾玄

2017年06月04日

■ロック魂の家電メーカー創業物語

 ロックを生きる「オレ」の物語は、矢沢永吉『成りあがり』から続く成功譚(たん)の系譜だ。永ちゃんはロックスターになり、著者は家電メーカーの創業者になった。新世代の扇風機(1台3万円以上!)やトースター(同2万円以上!)が大きな話題になったバルミューダだ。
 東京周縁のベッドタウンに生まれ、両親の離婚、母の死を経験。高2の時、進路指導に強烈な違和感を抱き、アンケート提出日に退学届を出して放浪の旅へ。帰国後に音楽活動を開始し、デビューのチャンスをつかむが、直前にスポンサーが降り……と、ここまでは、東西のロック青年が自伝に記すお約束だろう。
 が、著者に音楽の神は微笑(ほほえ)まなかった。代わりに開けたのが、ものづくりの道である。
 アップルに新たなロック魂を見いだし、ギターを工具に持ち変えて、ド素人の状態から町工場を回る。またしても困難の連続。それでも大手メーカーへの技術提供という安全牌(パイ)は取らず、こだわり抜いた製品を常識外の価格で打ち出してブレークさせた。
 で、成功したかというと、「それどころではない。続きを生き抜いていかなければならない」。
 ロックである。
(清野由美=ジャーナリスト)

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