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「マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議」 フィンランドの「あるある」感覚に共感

マッティは今日も憂鬱―フィンランド人の不思議 [作]カロリーナ・コルホネン

 洋服屋で「店員さんが、話しかけてくる」その気配だけで、もうその場から立ち去りたくなる。「出かけたいのに、ドアの外に住人がいる」いつまでも家のドアの内側で、外の気配を探っている自分。
 悪いことをしているわけでもないのに、なぜこんなに気後れしてしまうのか。そんな「あるある」感覚の1コママンガが詰まった、フィンランド発のコミックスだ。2015年にネットで発表されて話題になり、翌年書籍化され、この春日本語版が登場した。
 ささいなことだからこそ、恥ずかしさが先に立つ。空気を読んだつもりの行動の、かえって気まずい結果。他人への気づかいは、じつは付き合い下手の裏返し。シャイな日本人らしい特徴だな、と思っていたあれやこれやが、遠い海の向こうの国の本にみごとに描かれていて、驚きとともに、親近感がわく。
 絵がいい。最小限のシンプルな線。にもかかわらず、(だからこそ?)絶妙な表情のニュアンスがじわじわと伝わり、私の心の奥にこの主人公が入り込んでしまうのだ。
 読んでいて、とてももどかしい。でも、これがわかってしまう自分を、否定したくもない。そっと小さな声で、共感を語りたくなる本だ。=朝日新聞2017年7月2日掲載