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山本七平の思想―日本教と天皇制の70年 [著]東谷暁

2017年09月10日

■江戸の「藩」に見る企業の原型

 昭和を代表する評論家の一人、山本七平。本書は優に200冊以上に及ぶ彼の作品群の中から、代表作を選び出して解説。そこに七平の歩んだ苦難の人生も絡めつつ、彼が捉えた戦後70年余りにわたる日本社会を総括する。
 キリスト教徒として生まれ育ち、太平洋戦争でのフィリピン従軍を経て帰還した七平は、そうした彼ならではの体験をベースに戦後、『「空気」の研究』や『現人神(あらひとがみ)の創作者たち』など、日本社会独特の論理に光を当てた多彩な作品を世に送り出した。
 中でも79年に刊行された『日本資本主義の精神』では、江戸時代にまで遡(さかのぼ)って日本特有の経済システムを解明。日本企業の原型は、徳川幕府の支配下にあった数百の「藩」にあるとした。
 そこでは「君、君たらずとも、臣、臣たらざるべからず(主君が立派でなくとも、家臣は忠誠心を持たねばならない)」という独特のイデオロギーが存在し、これが日本企業の経営体質にも受け継がれた。その類似点が戦後の高度経済成長のように長所として働く一方、破綻(はたん)をもたらす短所にもなると見ていた。こうした分析は、近年、経営危機に陥った一部の大手企業などを見ると予言的ですらある。
 小林雅一(ジャーナリスト)

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