タイニードライブ(1) [作]大石まさる
スピーディーな切れ味の4コマ風ギャグ作品。スカッと爽快感がありながら、作り込みがとんでもなく細かく、味わいも深い。2人暮らしの姉妹を主人公に、にぎやかで、楽しくて、ちょっと不思議な日々が描かれる。
しっかり者の妹と自由奔放な性格の姉は、毎回日常のささいな問題をめぐって、ツッコミ漫才を繰り広げるのだが、そのエスカレートぶりが、ただごとではない。2人の想像力や妄想力が暴走して現実を巻き込み、単なる世間話が、ついには予想外のスペクタクルな出来事や不条理な事態へとハイテンポで展開していく。もはやこれは、おとぎ話なのかSFなのか、それとも単なるホラ話なのか、その時々のひらめきにより、次のコマで物語がどちらへ転がるかわからない。それでいて、かなり無理のある飛躍した展開も、卓抜した絵の力ですいすいと描ききってしまい、あっけなくスムーズに読ませてしまう。どこか、すぐれた落語の語りをも思わせる。
まんがという表現の本来持っている自由さを、のびのびと感じさせてくれ、とにかく楽しい。毎回の趣向も多彩で、何が飛び出すかわからない、オモチャ箱のような魅力の詰まった作品だ。=朝日新聞2017年9月10日掲載